健康診断という「病」

γーGTP、健診前のにわか禁酒は改善なし? 亀田高志 氏

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定期健康診断は、働く人のためのものではない?

 飲酒量を少なめにごまかして、悪い数値を瞬間的に改善しても、本当はGさんにとってよいことはありません。将来、深刻な病気やそれによる障害で苦しむのはご本人なのですから。

 健康状態を自ら確認できる、貴重な機会である定期健診を嫌がるようになってしまうのは実にもったいないことですね。

 自分の生活習慣と大切な身体のことを正直に申告して、ありのままのデータを知り、しかるべき対処を確実に行うというのが、本来の健康診断のあり方です。

 しかし、Gさんのような人が出てくるのは、現行の定期健診の制度と仕組みに原因があります。考えていただきたいのですが、定期健診の費用を負担しているのは雇用主である会社です。半世紀近く前の話になりますが、定期健診を定めた「労働安全衛生法」が昭和47年に施行されたとき、旧労働省が「会社が負担するように」との通達を出しています。

 ちなみにその当時は職場の労災事故で亡くなる人が現在より5倍以上あり、「けがと弁当は自分持ち」と産業現場で言われていたのです。

 それから40年以上を経て、平成28年度末に厚生労働省が「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会報告書」を公表しました。その中に健康診断の目的が明言されています。分かりやすく説明すると、「今の作業や労働に耐えられるか、それを続けさせても、脳卒中や心臓発作を起こしたりしないかを確認し、それらを防止するために行う」とあります。様々な検査を無料で受けられるメリットはありますが、本質的には会社のために行われているのです。決して福利厚生の一環としてのサービスではありません。

 ちなみに、何らかの病気を早期発見するために検査を行うことを「検診」と呼び、全般的な健康状態や将来のリスクを含めて評価することを「健診」と言います。後者は未然防止と健常な状態の維持が目的です。日本の定期健診は検診の色合いは無いことはないですが、本来はその名の通り「健診」なのです。

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