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公益通報者保護法とコンプライアンス 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原信郎 氏

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 日産自動車の無資格検査問題、神戸製鋼所のデータ改ざん問題など、昨年相次いだ企業不祥事に関連して、内部通報・内部告発をめぐる制度の在り方が、問題化しつつある。「企業不祥事から消費者の利益を守るために、公益通報者保護法を強化する必要がある」ということも、よく言われるようになった。

 公益通報者保護法は2000年代初頭、食品偽装やリコール隠しなどといった国民生活の安心・安全を脅かすような企業不祥事が内部通報を契機として相次いで発覚したことを受けて、2004年6月に制定され、2006年4月1日から施行された。同法の施行に伴い、企業の多くは、内部通報窓口を設置し、それが企業のコンプライアンス体制整備の重要な要素とされてきた。公益通報者保護法が企業のコンプライアンス対応に密接な関連性を有していることは、確かであろう。

 しかし、公益通報者保護法と組織のコンプライアンスは、その直接の目的は異なっている。目指す方向性は共通しているが、完全に一致するものではない。

 同法の目的は、「公益」目的の通報を行う者が不利益を受けないようにすること、つまり、「通報する労働者の権利」を保護することだ。その背景には、「組織で働く者には『違法行為や不正に関わることを強制されることを拒否する権利』がある」という考え方がある。その権利行使の重要な手段が、違法行為や不正を告発することであり、それは権利として保護されなければならない。

 組織側がそのような告発を行う者を労働関係において不利益に取り扱うことは、「告発する権利」に対する重大な侵害であり、社会的に許容されるものではない。違法行為や不正の告発が積極的に行われることは、それらが表面化して是正されること、さらには、同種の行為が抑止されることにもつながるので、組織における違法行為や不正の是正・防止というコンプライアンスの実現にもつながる。しかし、それは、「告発の権利」が保護されることによって生じる「結果」であり、それ自体が目的ではない。

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