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「リニア談合」の本質と独禁法コンプライアンス 本当に「日本社会が腐る」のか 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原信郎 氏

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 JR東海発注のリニア新幹線の工事をめぐる談合事件で、東京地検特捜部が、鹿島建設と清水建設、大成建設、大林組に、独禁法違反(不当な取引制限)の容疑で、公正取引委員会と合同で捜索を行ったことで、「ゼネコン談合」への関心が高まっている。

 リニア工事でのゼネコン4社の「受注調整」「合意」などに対して立件されようとしているのは「不当な取引制限」という「独禁法違反の犯罪」である。

 しかし、従来の入札談合事件とは異なり、リニア工事は、JR東海という民間企業の発注であり、大規模工事で極めて高度な技術が要求され、発注方式も、受注者選定のプロセスも複雑である。独禁法違反の犯罪として罰則適用することには様々な法律上の問題があり、独禁法違反で起訴に至る可能性は極めて低いというのが私の見方である。その点については、既に筆者の個人ブログ「郷原信郎が斬る」の「リニア談合、独禁法での起訴には重大な問題 ~全論点徹底解説~」で詳述した。多くのサイトに転載されているので、そちらを参照していただきたい。

「独禁法違反の犯罪」の成否以前の問題として、そもそも、独禁法で問題にすべき案件なのかという根本的な問題がある。それは独禁法コンプライアンスの基本的視点から考えるべき問題である。

 「リニア談合、捜査難航」という見方が強まることへの焦燥感からか、新聞紙上での「検察幹部」の的外れな発言が目立っている。「"民民"だったら談合していいのか」(産経新聞、メガプロジェクトの闇 「オールゼネコン」のリニア談合解明へ"最強の捜査機関"が動き出した)が、その典型だ。

 しかし、今回の問題を、「談合に当たるのか」「談合は許されるのか」という視点で考えるのは誤りだ。リニア工事は民間発注であり、刑法の談合罪が適用される「公の入札」の問題ではない。独禁法は、決して「『談合』を処罰する法律」ではない。そもそも、独禁法コンプライアンスの観点からどう評価されるのか、独禁法という法適用をすべき問題なのか、という点が問題の本質である。独禁法上の評価判断は、公取委を中心とする「競争法的視点」から行うべき問題であり、検察が「岡っ引き根性」で決めつけるような問題ではない。

「日本社会が腐る」とまでのたまうのであれば(産経新聞、ゼネコン4社が真っ二つ 談合否定組「必要な情報交換」 検察「日本社会が腐る」)、堂々と実名で意見を述べるべきであろう。そのような「検察幹部」の姿勢こそがコンプライアンス上の問題である。

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