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日産、神戸製鋼...大企業の不祥事を読み解く(前編) 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原信郎

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完成検査は自動車の製造や品質確保にとって重要?

 完成検査は、出荷前の最終確認のようなものである。車が販売されてから3年、5年経ってから行われる継続検査(一般的な「車検」)とは異なり、完成検査の段階で不具合が見つかる割合はほとんどないに等しい。製造プロセスにおいて、既に十分すぎるほどの安全確認が行われているからだ。完成検査の内容自体も、数値基準の判断はコンピュータが判定するなど、担当者にそれほど高度な技術を要求するものではないようだ。

 同じ日産が生産した自動車でも、輸出車では問題とはならず、国内向けだけの問題にとどまる。国交省の通達に基づく「完成検査」というのはあくまで日本の国内法によるもので、海外に輸出される自動車については、「型式指定」を受けている車については、一台一台車両を検査する「完成検査」を有資格者によって行うことは義務付けられていないからだ。

 現在の自動車産業においては、大量生産工程の中で、品質管理や検査のプロセスを経て自動車が製造されており、製造された完成車の出荷の段階で保安基準の適合性に問題があるということはほとんどないのが実情であろう。むしろ、重要なのは、工場の製造過程での安全性のチェックであり、技術面で有能な人材は、完成検査ではなく、製造プロセスの方に配置するというのが合理的な考え方とも言える。

 そのような考え方が、日産社内で完成検査を担当する要員の資格を軽視する発想を生み、無資格検査が恒常化、完成検査については書類の形式さえ整えておけばよいという意識から、検査者の「偽装」が行われることになり、末端の現場で「潜在化」していたのであろう。スバルで既に明らかになっているように、同様のことはほかの自動車メーカーでも起きていたのである。

 問題にされている検査員の資格というのは社内で認定することになっている。国家試験資格などとは異なり資格取得がそれ程困難とは思えないのに、なぜ、その「社内認定」を受けない無資格の社員が恒常的に検査を行い、しかも、それを資格者が検査したように「偽装」していたのか。おそらく上記のように、完成検査は自動車の製造や品質確保にとって重要ではないと考える風潮から、社内資格の認定基準を見直すなどといった、抜本的な対策を講じる必要性が認識されなかったということであろう。

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