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豊洲問題に見る「コンプライアンスの暴走」の危険 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原信郎

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「コンプライアンス的フレーズ」の危うさ

 しかし、「小池劇場」での演出は、全く逆だった。単なる「情報公開の不足」と言うべき盛り土一部不実施の事実がストーリーの中心に位置付けられ、それを決定した「犯人探し」という課題設定がなされたことで、まるで「安全」に関する重大な問題であるかのように誤解されて広められた。そして、豊洲市場に対するイメージは極端に悪化した。

 そして、今年1月には、東京都が豊洲新市場で実施した第9回地下水モニタリング調査の結果が発表され、最大で環境基準値の79倍のベンゼンが検出されたことや、今まで未検出だったシアンが計数十箇所で検出されたことが明らかになった。「盛り土問題」で悪化した「豊洲市場」のイメージは、さらに極端に悪化し、市場関係者からは、「もはや豊洲への移転は不可能」という声も上がっている。

 しかし、築地市場の設備の老朽化は、もはや限度を超えていると言われており、地下の土壌汚染の可能性も判明している。市場移転問題は抜き差しならない状況に陥っており、移転延期による巨額の維持費や新規設備投資に対する業者補償など、今後都民が負担することとなると考えられる損失は膨大な金額に上ることが予想される。

 「コンプライアンス=法令遵守」と捉えてはならない。コンプライアンスとは、社会的要請に応えることであり、様々な要請にバランス良く応えるための柔軟な対応の必要性は、社会の複雑化・多様化に伴って一層高まっている。

 その柔軟性を持つコンプライアンスの典型的なフレーズである「安心」「透明性」には、実は「暴走」の危険がある。そのことを象徴しているのが、小池知事が行っている「コンプライアンス都政」なのである。

郷原 信郎(ごうはら のぶお)
郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士
1955年島根県松江市生まれ。1977年東京大学理学部卒業。1983年検事任官。公正取引委員会事務局審査部付検事、東京地検検事、広島地検特別刑事部長、法務省法務総合研究所研究官、長崎地検次席検事などを経て2003年から桐蔭横浜大学大学院特任教授を兼任。2004年法務省法務総合研究所総括研究官兼教官。2005年桐蔭横浜大学法科大学院教授、コンプライアンス研究センター長。2006年検事退官。2008年郷原総合法律事務所(現郷原総合コンプライアンス法律事務所)開設。2009年総務省顧問・コンプライアンス室長。2012年 関西大学特任教授。2014年関西大学客員教授。現在、公職として、国土交通省公正入札調査会議委員、経済産業省産業構造審議会商務流通情報分科会安全小委員会委員、横浜市コンプライアンス外部委員を務めている。

キーワード:経営、CSR、環境問題、グローバル化、働き方改革、経営層

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