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豊洲問題に見る「コンプライアンスの暴走」の危険 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原信郎

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 こうして新市場の整備のほとんどが完了し、2016年11月7日に予定された移転に向けての最終段階の作業が進められていた昨年8月に、舛添知事の辞任を受けての都知事選挙で圧勝した小池百合子氏が都知事に就任し、豊洲への市場移転問題への対応の「主役」の座に登場することになった。

「情報公開の不足」を安全性への懸念に結びつけた小池氏

 昨年8月の都知事就任後間もなく、11月に予定されていた築地市場の豊洲への移転を延期する方針を発表した際、小池氏が移転延期の理由として挙げたのは、「安全性への懸念」「巨額かつ不透明な費用の増大」「情報公開の不足」の3点だった。

 既に、6000億円近くもの巨費が投じられて建物や設備のほとんどが完成し、移転に向けて冷凍業者などが設備の稼働に入っている段階では、安全性以外の問題で、移転を中止ないし大幅に延期することはあり得なかった。

 客観的な安全性には問題がないのに、情報開示・説明が不十分であるために、不安が解消できていないということであれば、改めて情報開示・説明を行うことで、安全性に対する疑問を解消することが何より重要だった。ところが、小池氏は、移転の是非の判断に「情報公開」の問題を持ち込んだ。そこに根本的な誤りがあった。

 さらに、その10日後、緊急会見を開いた小池氏は、土壌汚染対策のために敷地全体で行われていると説明されていた「盛り土」が、実際には、建物下では行われておらず、地下が空間になっていることを明らかにした。それが、専門家会議の提言に反し、安全性についてオーソライズされていないと述べた。加えて、行政手続き的にも問題があり、当時の担当者らにも話を聞く必要があるとした。

 この緊急会見以降、豊洲市場問題に対する注目度が一気に高まり、連日マスコミで報じられることとなるが、小池氏の上記発言を受け、社会的関心は「盛り土が行われていなかったことによる安全性への懸念」と「盛り土一部不実施の犯人探し」に集中した。

 建物下の地下空間にたまった水がまるで汚染の象徴であるかのように連日テレビで映し出され、その水から検出された有害物質の数値が繰り返し報じられた。そして、盛り土を行わないことを決めたのは一体誰なのか、といった観点から、小池氏就任前の東京都に対する批判も過熱した。

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