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豊洲問題に見る「コンプライアンスの暴走」の危険 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原信郎

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 しかし、組織の活動や業務をすべて公開し、透明にすることが求められているわけではない。情報開示が求められる程度は、事業・業務の内容や問題の性格、重要性によって異なる。また、開示された「情報」が正しく理解されず、誤ったイメージによって、価値判断や評価が行われることで、大きな弊害が生じる場合もある。情報開示は、受け取る側の「情報リテラシー」いかんによっては、「負の作用」を生じることもあるのである。

 特に、「安全性」の問題に関して、専門的な知識がなければ意味が正しく理解できない数値などが公表された場合、マスコミの取り上げ方によっては、健康への影響などについて、誤ったイメージが広がってしまい、正しい判断をすることが著しく困難になることもある。

豊洲市場問題のコンプライアンス的整理

 東京都にとって、築地市場の豊洲への移転問題は、上記の(1)~(3)が複雑に交錯する困難なコンプライアンス問題である。

 土壌に汚染物質を含む工場跡地に生鮮食品を扱う市場を建設するのであるから、まず、(1)の「安全性」に関して、土壌汚染対策などにおいて法令上の基準をクリアし、健康被害の可能性をなくすための万全の安全対策が求められることは言うまでもない。

 次に、(2)の「安心」に関して、「安全性」を確保するための対策が万全であることについて、市場関係者や消費者などに理解・納得してもらい、それを通して「安心」を確保する必要がある。

 そして、(3)の「情報開示」に関しては、安全性に関わる事項について十分な情報開示を行うことと、安全対策などに関する議会での質問などに対して正確な説明を丁寧に行うことである。

 築地市場の豊洲への移転は、石原慎太郎知事時代の2001年に決定された方針にしたがい、その後の猪瀬直樹知事時代、舛添要一知事時代も着々と進められてきた。その過程で、安全対策を外部の専門家が評価する枠組みとして設置されたのが「専門家会議」であり、その方針に沿って、外部者からなる「技術会議」での議論も踏まえて、建設計画が具体化されてきた。

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