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タカタ問題とパロマ問題に共通する「世の中の誤解」 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原信郎

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安全のための企業努力が「欠陥製品バッシング」の原因となる悲劇

 タカタのエアバッグの経年劣化が進んだことは、納品先である自動車メーカーのエアバッグ配置位置とも関係していた。パロマの場合、修理業者の不正改造によって不具合が生じた。製造段階と流通段階といった面での差はあるが、いずれにせよ、メーカーの手を離れた段階で別の危険が付加されたことで危険性が高まったといえる。

 もちろん、メーカーには、自社製品に関連する危険を防止する社会的責任がある。使用者への周知や関係業者との連携など、事故防止に向けた最大限の努力が必要であることは間違いない。安全コンプライアンスという面での両社の対応には不十分な面もあったことは否定できない。

 とはいえ、「危険な製品を生み出したにもかかわらず対応が不十分だ」というような点だけがことさらに強調され、同企業に対する責任追及にのみ目が向けられて問題が収束していくのは、事故の発生に対する社会の受け止め方として、果たして正しいと言えるだろうか。

 パロマの場合、不正改造を行った修理業者の責任や、監督官庁たる経産省の指導不足といった点は最終的にはほとんど問題にされず、パロマの元社長・元品質管理部長のみが過失による周知不足で刑事責任を問われ、問題は収束した。

 タカタの問題は現在も進行中だが、米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)は部品の共通化を理由に、一次的な責任を負うはずの自動車メーカーを差し置いてタカタに直接対応を求める姿勢を取っている。「不発」「暴発」という表れ方の差こそあれ、火薬の経年劣化というリスクは明らかになってきており、その有効な解決策は定期交換以外にないことも既に指摘されている。本来、自動車業界全体で対応すべきものであるにもかかわらず、部品メーカー1社の責任問題として収束する可能性が高い。

 いずれも、一連の動きの中では、本来であればより一層安全に資したはずの製品であったことは世の中にほとんど理解されていない。安全確保のための優れた製品を開発した企業が、その使い方や開発当初予期し得なかった事情によって製品に不具合が生じたような場合に、否応なく集中的な批判・非難を浴びて存亡の危機に立たされることになれば、社会にとって大きな損失だ。

 問題の本質が誤解されて広まり、巨大不祥事に発展することは、企業に大きなダメージを与えるだけでなく、社会的にも大きな損失を招く。パロマ、タカタという不祥事事例には、企業のみならず、社会全体にとっても学ぶべき点が多い。

郷原 信郎(ごうはら のぶお)
郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士
1955年島根県松江市生まれ。1977年東京大学理学部卒業。1983年検事任官。公正取引委員会事務局審査部付検事、東京地検検事、広島地検特別刑事部長、法務省法務総合研究所研究官、長崎地検次席検事などを経て2003年から桐蔭横浜大学大学院特任教授を兼任。2004年法務省法務総合研究所総括研究官兼教官。2005年桐蔭横浜大学法科大学院教授、コンプライアンス研究センター長。2006年検事退官。2008年郷原総合法律事務所(現郷原総合コンプライアンス法律事務所)開設。2009年総務省顧問・コンプライアンス室長。2012年 関西大学特任教授。2014年関西大学客員教授。現在、公職として、国土交通省公正入札調査会議委員、経済産業省産業構造審議会商務流通情報分科会安全小委員会委員、横浜市コンプライアンス外部委員を務めている。

キーワード:経営、CSR、環境問題、グローバル化、働き方改革、経営層

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