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第三者委員会が果たすべき役割と世の中の「誤解」 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原信郎 氏

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 この報告書では、「招致委員会がコンサルタントに対して支払った金額には妥当性があるため、不正な支払いとは認められない」と述べているが、そもそも金額の妥当性に関する客観的な資料は何ら示されていない。世界陸上北京大会を実現させた実績を持つ有能なコンサルタントだというが、果たして本当に彼の働きによって同大会が実現したのかという点について全く裏が取れていない。

 また、招致が成功した理由や原因、コンサルティング契約に当たって半分以上の金額を成功報酬に回した理由も、何1つ具体的に示されていない。そのような契約が「適正だった」と判断することなど、現時点ではできないはずだ。

 結局のところ、疑惑に対して納得のいく説明を行えるだけの客観的な資料が全くない状態で、専門家だとか中立的な第三者などによる何らかのお墨付きを得ることで、説明を可能にしようとした、ということでしかない。

「当事者からの報酬」は中立性を否定する理由にはならない

 第三者委員会とは、不祥事を起こしたために信頼を失っている組織が、自ら調査を行ってもその内容が信頼されないような状況において、当該組織に代わって中立的かつ客観的な立場から調査を行い、調査結果を取りまとめて原因を分析し、再発防止策を提言する役割を果たすものである。第三者委員会による事実調査や原因分析に対して世の中の理解が得られれば、不祥事は解決・沈静化に向かうことになる。

 そのような第三者委員会の機能が果たされるためには、第三者委員会の客観性・中立性に対する信頼が必要となる。前述の事例のように、最初から依頼者の側の意向を受け、依頼者のために結論ありきのような調査を行うものであってはならない。

 冒頭に述べたように、依頼者寄りの結論を出す第三者委員会のことが度々問題となるため、その中立性について厳しい目が向けられるのはいたしかたないと言えよう。しかし、その中でしばしば聞かれる「当事者から報酬を受け取って調査を行うのだから、依頼した当事者寄りの結論になるのは当然だ」という見方は間違っていると思う。

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