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「カビ型行為」対策の切り札、"問題発掘型アンケート調査" 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原信郎

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内部監査と内部通報制度の限界

 一方、内部通報制度は、2006年に公益通報者保護法が施行されたために、ほとんどの大企業で何らかの形で導入されている。しかし、内部通報窓口への通報によって、業務に関する重大な問題が把握できたという話はほとんど聞かない。

 それは、内部通報というのが、社員個人の積極的なアクションだからである。通常それは、上司への不満や同僚への妬みなどの個人的動機によって行われるものが大部分であり、申告内容の多くは、軽微なセクハラ、パワハラ、服務規律違反などである。

 業務に関する問題行為で、しかも、多数の人間がかかわっている「カビ型」の問題行為というのは、個人を超えた組織的な問題であり、個人的な動機による通報になじみにくい。逆に、通報によって重大な問題が発覚すれば、業務にも、当該部門にも、大きな影響が生じることになり、職場内で通報の「犯人探し」が行われることもあり得る。

 そういった理由から、不正行為に堪えられない社員の主体的なアクションが行われる場合、告発者の秘匿が保障されるマスコミや監督官庁等への「内部告発」という形で外部に流出することが多い。社員の通報窓口の認知度、制度への理解を深め、窓口への通報が行われやすくなるよう、運用の改善を図ることは必要だが、問題行為の把握という面では限界があることも事実である。

 では、組織内に潜在化する「カビ型」の問題行為を把握するためには、どのような方法を用いればよいのか。

 まず、不祥事の再発防止策として、必ず出てくるのが、「内部監査の強化・厳格化」だが、業務と一体化した形で潜在化・恒常化している「カビ型」の問題を監査によって発見することは容易ではなく、「性悪説」に立った不正調査型監査でも行わない限り、具体的な問題の把握は期待し難い。

 結局のところ、問題行為にかかわっている社員から情報を得ること以外に、「カビ型行為」の手掛かりを得ることは非常に困難なのである。

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