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「カビ型行為」こそが企業不祥事の「問題の核心」 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原信郎

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化血研不正問題の根幹は「違法行為による呪縛」

 「くい打ちデータ」を取得することと建築する建物の安全性とは、必ずしも直接的な関連性はないとされている。そのため、データの取得・保存は、法令上義務付けられてはいたが、かつては、不可欠なこととは考えられていなかったのであろう。

 しかし、経済社会全体にコンプライアンスという言葉が浸透するに伴い、安全・危険とは直結しないことであっても、業務に関するデータを取得・保存することは、その事業者の信頼性にかかわる重要な要素とされるようになった。その中で、「データの偽装」に対する社会的批判は、以前とは比較にならない程大きなものとなった。

 データ改ざんへの関与者も、それを止めようとは思ったはずだ。しか、それを抜本的に解決するためには、「これまでの機器では、記録が取れない時はデータの偽装・改ざんを行っていた」と正直に申告しなければならない。それは、法令違反を自ら申告することであり、それ自体重大な責任を問われることとなる。

 業界全体に蔓延している行為であっても、表面化すれば、最初に明らかになった問題の当事者に重大な責任が生じることが予想される。結局、くい打ちデータの改ざんは、業界内で自浄されることはなかった。渡り廊下の手すりがずれていることに気づいたマンションの住民からの指摘によって発覚するという、最悪の展開を迎えることとなった。

 化血研不正問題とは、化学及血清療法研究所(熊本市、化血研)が40年以上の長期にわたり、厚生労働省の承認書とは異なる手順で血漿分画製剤を生産し、かつ、組織ぐるみで偽装書類を作成するなどの周到かつ悪質な隠蔽工作を行っていたことが発覚したものである。調査を行った第三者委員会による報告書の中で、長期間にわたって組織的に行われた不正行為を解消是正することの困難性に関して、核心をついた指摘がなされた。

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