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「カビ型行為」こそが企業不祥事の「問題の核心」 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原信郎

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 このように、「カビ型行為」を解消するためには、過去の違法行為の事実を見なかったことにして、今後は違法行為をしないように、という「法令順守」の命令を行うだけでは不十分だ。それまで違法行為が恒常化していたという事実をすべて表に出した上で、その実態を前提にして、解消のための方策を講ずることが不可欠なのである。

 しかしながら、いったん不正行為を行っていたことを認めてしまえば、その事情の如何を問わず、容赦のない厳しい批判・非難を受けるというのが日本社会の実情であり、企業としては、建前上、「違法行為は行っていない」ということにせざるを得ない。それが違法行為の発覚、そして解決を決定的に困難にしてしまうのである。

マンションくい打ちデータ改ざん問題は業界に根深く浸透

 まさにこれと同様の構図が、近年の重大な企業不祥事にも表れている。マンションくい打ちデータ改ざん問題や化血研不正問題などは、記憶に新しいところであろう。

 マンションくい打ちデータ改ざん問題は、三井住友建設が施工主となって行っていたマンションの建設に際し、旭化成建材の工事の一部に不備があったことと、施工報告書の一部データが無断で書き換えられていたことが明らかになったものである。

 その後、旭化成建材が過去10年間に施工したくい打ち工事のうち、約300件前後が改ざんに該当するという調査結果が発表され、会社全体、同業他社でもデータ偽装が発覚するなど、業界全体の問題へと広がった。

 不正が行われた原因は、くい打ちデータの機器の不調でデータが取れない、記録紙が雨に濡れて読めないなどの事態が発生していたためだったとされている。工事のデータを記録し、正確に報告することは、くい打ち工事を行う業者の義務として法令で定められていたものの、それを行う機器の性能が追いついておらず、現場では技術者の経験と勘によって安全性を判断し、偽装したデータで外形を整えていたというのが実態であった。

 これは、ステンレス鋼管データ捏造事件と非常に類似しており、コンプライアンス対応も同様の事情によって妨げられたと考えられる。

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