経営層のための「稼ぐ力」を高める不動産戦略

サテライトオフィスは働き方を変えるか?(前編) 「なぜここで働くか」明確な意志が生産性高める JLL 執行役員 コーポレート営業本部長 佐藤 俊朗氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

サテライトオフィスのあるべき姿

――Salesforceにとってのサテライトオフィスの意義についてお聞かせください。

 他社から見るとユニークかもしれませんが、当社ではサテライトオフィスが企業としての存在意義や文化に基づくビジネスモデルを体現できる場所や環境であることが最も大事なことになります。

――体現すべきビジネスモデルはどのようなものですか?

 当社の創業者で現会長兼CEO(最高経営責任者)であるマーク・ベニオフは、1999年の創業当初からビジネスは世界中のコミュニティーを良くしていくためのプラットフォームであるべきだという考え強く持っていました。その考え方に基づき、社会還元とビジネスを融合するための3つの1(ワン)%を意味する「1―1―1モデル:株式の1%を助成金として寄付をする/製品の1%をNPO団体に提供する/従業員の就業時間の1%を社会貢献活動に充てる」をつくり、企業文化の基盤となっています。この社会貢献活動はSalesforceの根幹であり、白浜オフィスの社員も同じ考えで動いています。

――白浜オフィスはその1―1―1モデルの実践を小規模かつ社員に適した環境でサテライト化したものだということでしょうか?

 はい。白浜オフィスの場合、貢献する先としての社会がより小さな白浜町というコミュニティーなので、大都市よりも社会貢献に関する反応がじかに受け取れます。ここで働く社員もこれを体感し、地元地域の方々から「ありがとう」という言葉をじかに言われることによって、本人のやる気がモチベートされます。これが働き方を変える1つのトリガーとなっているのです。

サテライトオフィスのあり方と生産性の向上とは

 ここまで吉野氏にお話を聞いて、サテライトオフィスにとって重要なことは、都心郊外であっても、リゾート地であっても同じであることに気づかされました。メインオフィスから分離していて、通いやすく、働きやすい環境だけではなく、メインオフィスよりも社員の生活と社会とのかかわり方をより意識したプラットフォームであることが重要だということです。

 また、働く人と企業の両方にとってサテライトオフィスがある明確なテーマが備わったものであると、人がより意義を持って活用し、より生産性が高まるのだということです。白浜オフィスのケースでは自社の企業モデルを反映した「地域コミュニティーへの社会貢献活動」と、「働き方を変えるためのオフィス」というテーマの明確な認識がその環境を活かす原動力となっているようです。

 JLLが本年6月に発表した、働き方に関する提案「Future of Work 働き方の未来へ」の第1章「ワークプレイスがもたらすヒューマン・エクスペリエンス」では、世界12か国7,364人、日本508人(従業員100名以上の企業を対象)への調査を基に、仕事のパフォーマンスの達成に向けて、働く環境が人にもたらすエクスペリエンス(体験)がビジネスにどのような影響を及ぼすのかを解析しています。その中で、オフィスなどのワークプレイスで、働く人が最良のヒューマン・エクスペリエンスを得られれば、パフォーマンスの向上と同時に、重要な企業目的が達成できると述べています。

 これらは短期的な業績を達成するよりも難しいことですが、経営者が最も達成したいことではないでしょうか。Salesforceの白浜オフィスは、ビジネスモデルと企業文化をサテライトオフィスで体現し、適切に運営することによって、上記のような企業目的を達成し、生産性と企業価値を向上させているケースであると言えます。

 後編では再びSalesforceの事例をご紹介しながら、サテライトオフィスでの「働き方改革」を通して、真のワークライフバランス=「ライフワーキング」について検証します。

佐藤 俊朗(さとう としろう)
JLL 執行役員 コーポレート営業本部長
1988年、米系大手不動産サービス会社に入社。約10年間の米国勤務を経て、日本法人で企業不動産(CRE)ならびに海外不動産サービスを事業責任者として牽引したのち、2012年、JLL入社。四半世紀以上に渡り、日本企業及び外資系企業向けに、グローバルかつ総合的に不動産サービスを提供。不動産コンサルティングから取引管理、ポートフォリオ戦略、施設管理、海外不動産投資実務まで、広範な分野で専門的な知識と経験を持つ。明治大学ビジネススクールの兼任講師も務め、「グローバルCRE戦略論」等の不動産関連講義を担当している。取得資格:FRICS MCR 米国不動産ライセンス(NY/NJ/CA州) 宅建

キーワード:経営、マーケティング、管理職、人材、営業、イノベーション、経営層

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。