泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

自動運転で注目!半導体企業エヌビディアの実像 GFリサーチ 泉田良輔

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 では、エヌビディアのようなファブレスモデルが投資家にとって良いかというとどうであろうか。

 当期純利益に減価償却およびのれんの償却を加え、有形固定資産の取得を差し引いたものをフリーキャッシュフローとし、それが売上高に対してどの程度の比率かを示したのが下図である。

 これだけを見ると、IDMとして安定的に正のフリーキャッシュフローを計上してきたインテルには驚かされるし、また、先ほども指摘したように、エヌビディアも2011年度以降はインテルと同水準の比率を計上するまでになってきている。これだけでは一概にどちらの企業の経営形態(つまりIDMかファブレスか)が良いとは言い切れないだろう。

 ただし、特筆すべきは、エヌビディアの2016年度におけるフリーキャッシュフロー比率が過去最高水準となっている点だ。今後この水準がどこまで伸びるかが、インテルのIDMモデルが良いのか、エヌビディアのファブレスモデルが良いかという議論のポイントになるだろう。

エヌビディアは自動運転時代の覇者になれるか?

 次にエヌビディアの未来戦略を見てみよう。

 同社は2017年5月の投資家向けプレゼンテーションで、成長のドライバーとして、ゲーム、自動運転車、AIの3つを上げている[2]

 エヌビディアをすでにご存じの方は、これ自体で驚くような要素はないかもしれないが、詳細を見ていくとエヌビディアの描く事業規模の大きさに驚きを隠しえない。ここでは、今まさに大きくなりつつある自動運転車の事業戦略について説明しよう。

 同社の自動車関連の売上高は先ほど見たように全体の6%程度に過ぎない。それほど大きな比率があるとは言えない。

 ただし、これは自動車産業の特徴からして驚くべきことではない。同業界では新車の開発を始めて新しい技術を搭載した製品が上梓(じょうし)されるまでに3~5年を要することは珍しくない。自動運転車が注目され始めた2012年以降、提携する企業数が増え続けていることも考えれば、今後も長期的に成長し続ける事業といえるであろう。

 注目したいのは自動運転車への取り組みにおけるカバー範囲の広さと同社の業界での位置づけだ。

 同社は自動運転車への取り組みにおいて、AIを活用したコンピューティング・プラットフォームの市場を狙っている。これは、自動車内におけるデータ処理から、さらには自動車からネットワーク経由で収集したデータを処理するデータセンターの基盤システムまでを幅広く自社の事業機会にすべく動いているという意味だ。

 例えば、車側には車載AIコンピューター「DRIVE PX」を、データセンター側での地図情報のデータ処理には「NVIDIA Mapworks」を、AIの中核となるディープラーニングという処理の開発用システムには「NVIDIA DGX-1」をそれぞれ提供するといったように、自動車メーカーからデータ処理事業者までの幅広い顧客をエヌビディア製品で取り込もうとしている。

 同社の自動運転への取り組みにおける業界での位置づけも興味深い。同社は自動車メーカーと協業して自動運転車を開発しているのだが、相手にはイーロン・マスク氏が最高経営責任者(CEO)を務めるテスラといった新興自動車メーカーだけではなく、トヨタ自動車、ダイムラー、アウディといった大手が含まれている。部品メーカーとしてもボッシュ、ZF、コンチネンタルといったパートナーがすでにそろう。

 また、自動運転車で活用する高精細な3次元(3D)地図の作成(HDマッピング)についてもパートナーとして日本のゼンリン、ドイツのヒア、オランダのトムトム、また中国のバイドゥー、テンセントなどが参加している。もはや自動車・部品メーカーだけではなく、自動車による移動サービスを含んだプレーヤーまでがパートナーに含まれている様相である。

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