泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

自動運転で注目!半導体企業エヌビディアの実像 GFリサーチ 泉田良輔

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自動車向けの売上高比率はまだ6%

 では、エヌビディアはどのような事業で収益を上げているのか。エヌビディアがGPUの会社だといわれるように売上高のうち80%強は、ゲームなどの画像処理を行うGPUというチップが占める。したがって、同社の強みを理解するにはGPUの事業を見ておけばよいということになるが、今はそれ以外の製品も見逃せない。

 特に重要なのは、売上高の16%を占めるテグラ・プロセッサー(Tegra Processor)だ。このテグラは画像処理の得意なSoCであり、現在売れに売れている家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」に使用されていることで知られる。GPUの2018年1月期の売上高は対前年度比40%増と大きな伸びを示したが、テグラは同86%増とさらに大きな伸びを示している。これは発売1年目の販売台数が1700万台超を見込むニンテンドースイッチ[1]向けが貢献していると思われる。

 続いて、売上高の用途別比率を見てみよう。

 最も比率が高いのがゲーム向けで全体の57%を占める。エヌビディアのGPUはゲーム用途でニーズが高いことを反映しているのだろう。エヌビディアのGPUはコアゲーマー向けの半導体だ。現在はe-Sportsという言葉も生まれているが、ゲーム上での反応速度や画像のクオリティーの高さが求められるケースが多い。過去はマニア向けの市場であったものが、最近ではより一般向けに普及しつつある。次いで多いのがデータセンター向けで20%。この2つのカテゴリーで約80%を占める。

 この2カテゴリーは売上高比率が高いだけではなく、成長率も高い。2018年1月期におけるゲーム向け売上高は対前年度比で36%増、データセンター向けは同113%増と、その他のカテゴリーの売上高成長率よりも大きな伸びを示した。

 最近、同社は自動運転車向けのAI半導体企業として注目されがちであるが、現時点における自動車向け売上高比率は6%である。また売上高成長率でいえば15%であり、先の2カテゴリーに比べればまだ同社の売上高全体へのインパクトは大きいとは言えない。

 では、エヌビディアの収益性はどうであろうか。

 下図はエヌビディアとインテルの粗利益率の推移を示したものである。インテルについてはPCの普及が進み始めた1994年度からのデータを、またエヌビディアについては1999年の上場を踏まえて1998年度からのデータを示している。

 ここから分かるのは、インテルは粗利益率が50~60%台で推移してきたのに対して、エヌビディアは過去、30~40%台であったということだ。そのエヌビディアの粗利益率は2011年度以降50%台で推移するようになり、最近では60%近くになっている。

 インテルは設計から製造までを手掛けるいわゆるIDM(インテグレイティッド・デバイス・マニュファクチャラー)であり、製造段階における設備稼働率や歩留まり(良品率)が高ければその過程での利益も手にすることができる。したがって、ノウハウがあれば粗利益率は高めに出やすい。

 一方、エヌビディアは、TSMCなどのファンドリー(製造を専門に請け負う企業)に半導体の製造を委託する。したがって、エヌビディアの場合には製造段階における利益を基本的には手にすることができず、収益性を高めるにはファンドリーから調達した半導体製品の原価に対して、顧客がどのくらい付加価値を認めてもらえるかがカギになる。つまり、エヌビディアの仕事は、設計とマーケティングにおける付加価値の追求である。

 エヌビディアの粗利益率が目立って上昇しているのは2011年度以降である。ゲーム向けGPUに加えて、データセンター、自動運転車、最近では仮想通貨のマイニングなど、同社のGPUが適する用途が増えてきたのが背景だ。それら用途において、設計技術に対する付加価値を高めつつ、顧客や産業との接点を増やしてきたことが大きいのだろう。

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