泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

すべてを飲み込むアマゾン、「持つ経営」で何を狙う GFリサーチ 泉田良輔

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 一方、アスクルは現時点ではヤフーが発行済株式数の40%超を保有している。2012年4月アスクルはヤフーと業務・資本提携を締結し、第三者割当増資によりヤフーが筆頭株主となっている。[3]ヤフーにとっては「Yahoo!ショッピング」や「Yahoo!オークション」でアスクルの物流インフラを活用したいという狙いがあったようだ。

 アスクルの物流インフラに、セブン&アイのような大手小売りプレーヤーが参画することで設備稼働率の上昇が見込めることは、アスクルにとってはプラスであることは言うまでもないが、物流・配送業務を共同化することは、関係企業の意見調整で難しい問題も出てくるリスクがある。「持つ経営」の下、物流・配送網を強化しているアマゾンに対抗するには意思決定の面でもスピードが必要だろう。

 いずれにせよ、アマゾンのようなEC事業者が勢いを加速している今、日本の小売業はリアル店舗の拡大を主体とした成長という戦略の見直しを迫られている。これまでは、リアル店舗の数と規模が消費者との接点の数を意味し、競争優位を示すものであった。それが今では、ネットでの品ぞろえや買い物体験といったことに加え、物流・配送という接点にも強みが求められるようになったという変化は大きい。

 これまで店舗で買い物をする体験はECには実現できないとされてきた。個人的な考えの域を出ないが、消費者にとってECがより身近になり、価格も競争力があるだけではなく、物流・配送が整備されることで、店舗で買い物をすることがベネフィットではなく、コストに感じている層も出てきているのではないかと思わせる。となると日本の小売業は、これまで優良資産であったリアル店舗が一気に不良資産に変わってしまうリスクにさらされていることにも気づかなければならない。

参考情報)

[1] 『アスクル株式会社との業務提携基本合意に関するお知らせ』(株式会社セブン&アイ・ホールディングス)

[2] 『#04 アマゾンと激突 セブン、迫られる変身』(日本経済新聞 電子版)

[3] 『ヤフー株式会社との業務・資本提携及び第三者割当により発行される株式の募集並びに主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ』(アスクル株式会社)

泉田良輔 (いずみだ りょうすけ)
 GFリサーチ代表。個人投資家のための金融経済メディアLongine(ロンジン)編集長、および株1(カブワン)投信1(トウシンワン)の監修も務める。それ以前はフィデリティ投信・調査部にて日本のテクノロジーセクターの証券アナリスト、日本生命・国際投資部では外国株式運用のファンドマネージャーとして従事。慶応義塾大学大学院卒。著書に『銀行はこれからどうなるのか』『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』。東京工業大学大学院非常勤講師。

キーワード:経営、企画、技術、製造、経営層、営業、管理職、プレーヤー、経営、イノベーション、国際情勢

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