泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

すべてを飲み込むアマゾン、「持つ経営」で何を狙う GFリサーチ 泉田良輔

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 下図は、アマゾンの設備投資関連の投資額推移として各四半期末における直近12カ月間(Trailing Twelve Month:TTM)の数値を追ったものである。社内向けソフトウエアやウェブサイト制作を含む有形固定資産のネット取得額、キャピタルリース下での有形固定資産取得額、ファイナンスリースの返済額を加えている。

 すぐわかるように、アマゾンは2017年第3四半期末の時点で年間約2兆円(1ドル=113円換算で180億ドル)を設備投資にあてている。ちなみに、トヨタの2016年度における年間の設備投資(有形固定資産への投資額)は約1.2兆円であり、その1.6倍だ。

 アマゾンの有形固定資産はこうして増加してきたのであり、典型的なインターネット企業の特徴である「持たざる経営」ではなく、「持つ経営」を推進することで成長してきたことになる。

株式市場も受け入れるアマゾンの「持つ経営」

 株価に見るアマゾンへの評価も2017年に入ってこれまでと違う動きをするようになってきている。

 下図はアマゾンの株価と先ほど取り上げたファイナンスリースとキャピタルリース下で取得した有形固定資産を控除したFCF(フリーキャッシュフロー)の推移を見たものである。

 2016年末まで株価は、FCFフローの改善を好感するように上昇してきたように見える。ところが、2017年に入って、リース調整後FCFが急速に悪化したにもかかわらず、株価は上昇を続けている。

 ちなみにアマゾンはホールフーズマーケットの買収を2017年6月に発表し、8月に買収が完了した。これは、アマゾンが様々な資産を持つことで一時的にキャッシュフローは悪化するかもしれないが、長期的には競争優位を確立できるという考えを株主も支持しているかのような動きである。

配送をほとんど自前で行う選択肢もあり?

 アマゾンが資産を「持つ経営」に「かじ」を切ってきたことを見てきたが、今後は何にかじを切るのであろうか。私の想像の域を出ないが現実のものとなれば、インパクトの出ることを考えてみよう。

 アマゾンは物流・配送(フルフィルメント)関連に年間約2兆円を費やしている(2016年に176億ドル)。2017年は9カ月間ですでに約1.8兆円(163億ドル)を計上した。クリスマスシーズンの第4四半期にはさらにその費用が積み上がるはずだ。

 ちなみに、宅急便を展開するヤマトホールディングスの2017年度の売上高予想が約1.5兆円である。アマゾンが現在の物流・配送関連業務を内製化によって効率化したいと考えるのであれば、業務領域は同一ではないものの、ヤマトと同規模の物流・配送事業を展開することが可能だ。

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