泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

すべてを飲み込むアマゾン、「持つ経営」で何を狙う GFリサーチ 泉田良輔

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 さらに、事業別の利益を見ると驚く。下図は、四半期ごとの北米、海外(international)、AWSの営業利益(ここでは、Operating Incomeを営業利益とする)であるが、アマゾンの利益の多くを占めるのは、売上高では10%弱に過ぎないAWSの事業である。

 北米事業は利益を計上しているものの、すでにAWSの利益の方が大きい。北米以外の海外事業は営業損失の状況にあり、そしてその損失規模は拡大している。

 ただし、アマゾンの海外事業が近年、四半期ごとにその損失を拡大させているのは、事業がうまくいっていないというより、損失を恐れず新サービスを投入しているためであろう。アマゾンの競合企業はリアル店舗を持つ小売業であり、競争は激しい。競合企業に勝つにはかなり思い切った挑戦が必要だ。

 もちろん、アマゾンが海外事業で損失を伴うほどの大胆な挑戦ができるのもAWSのような利益を生み出す事業を持っているからと言える。さらに大きな目で見れば、損失が拡大している海外事業を抱えていても株価が上昇しているのは、アマゾンのこの戦略に株主が賛同しているためと言えよう。これはアマゾンの競合企業にとっては非常に厄介だ。

固定資産を増やしリアルを飲み込み始める

 さて、アマゾンの売上高や利益の構成が理解できたところで、分析を進めるともっと驚くことが資産構成やキャッシュフローの側面からわかる。

 まず、資産構成の特徴から見ていこう。

 下図は、アマゾンの総資産および総資産に占める有形固定資産比率の推移を見たものである。2007~08年前後は有形固定資産の比率が10%前後であった。それが2010年ぐらいから上昇し、現時点(2017年Q3)では約40%に及んでいる。

 有形固定資産が10億ドルを超えたのが8年前の2009年9月末である。2017年9月末時点でアマゾンの総資産は1153億ドルあり(1ドル=113円換算で約13兆円)、そのうち453億ドル(同約5兆円)が有形固定資産となっている。有形固定資産は8年で約42倍に拡大した。

 一般にインターネット企業は大きな有形固定資産をもたず「軽い」経営をしている。製造業などが生産設備などを保有しているのとは異なるのだが、アマゾンの資産構成は典型的なインターネット企業のものではない。おそらくアマゾンは有形固定資産として、物流拠点やそれに必要な設備などに大きな投資をしている。同社の設備投資(有形固定資産への投資)の推移を調べてみると、その推測は裏付けられる。

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