泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

「名目GDP 600兆円」の狙いは株価への配慮? 需要喚起に、もっとテクノロジーの活用を GFリサーチ 泉田良輔氏

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 個人が消費をする高単価の商品といえばクルマや家電を真っ先に思い浮かべる。それらの普及率の高さや耐久消費財であることを考えれば、税制での優遇など特別な施策がなければ、これまで以上に消費者が積極的に購入する状況は考えにくい。消費税の軽減税率の適用範囲を盛んに議論する中で、以前のエコポイントのように一部の消費財に限って財源を割り当てるのは現実的にハードルが高いと思う。

シェアリングエコノミーで既存の資産から付加価値を

 とすれば、どのような課題解決策が考えられるだろうか。2016年以降に注目すべきテーマとして、筆者は「シェアリングエコノミー」を挙げたい。高単価商品の消費を伸ばしにくいのであれば、すでに普及している資産や商品の回転率(つまり使用頻度)を上げることで付加価値を生み出そうというものだ。

 自家用車を考えればすぐに理解してもらえると思うが、都心でクルマを個人で保有している場合、多くの人は週末だけクルマに乗り、平日はほとんど使わない、という人が多いのではないか。そういう場合、たとえば自分がクルマを使わない曜日や時間帯に、クルマを第三者に貸し出せば対価を得られる。いわゆる「カーシェア」である。これまでになかった需要を喚起できる。

 一方で、カーシェアはタクシーや公共交通機関の需要を代替しているだけではないか、という批判もあるだろう。確かに短期的にはそういう面もある。しかし、中長期的にみてクルマの自動運転テクノロジーが確立されてくれば、全国どこでも自動で配車され、低コストで利用できるようになろう。そうなれば、「公共交通機関で行くのは不便だがタクシーを使うと料金が高すぎる」と諦めていた場所への移動ニーズを掘り起こし、新しい市場をつくることは十分可能だ。

 カーシェアと同様に、既にある住宅資産(自分が使用していない住宅や空き部屋)を第三者に貸し出して付加価値を生む「ホームシェア」も考えられる。民間住宅は名目GDPにおける消費ではないが、シェアリングエコノミーの対象として魅力的である。

 今後人口減少を伴う中で、住宅投資が増えて名目GDPに大きく貢献するとは考えにくい。しかし、カーシェアと同様に、安価に宿泊できるなら旅行してみたい(日本人も外国人観光客も)とか、1週間だけ別荘のように使ってみたい、といった新たな需要を喚起することになる。

 ホームシェアもカーシェアと同じく、ホテルや旅館の需要を奪っているだけではないかという批判もあるだろう。しかし、ホテルを営業できるほどの宿泊需要がない地域や、外国人旅行者の数がこれまでの宿泊施設の収容人数を上回るような状況では、新たな需要を喚起するきっかけにはなる。今後2020年の東京オリンピックにかけて外国人訪日客が増え、都心はもとより地方にとっても収容人数以上の旅行客をどう受け入れればいいのか、既に課題となっている。

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