泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

再考、東芝が不正会計に手を出した理由 GFリサーチ 泉田良輔氏

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【疑問1】東芝の不正会計は「財務制限事項」がきっかけだったのか

 フリーキャッシュフローを見る限り、東芝はそれなりにやり繰りしてきた印象がある。また、09年度には増資も行うことができた。それなのに、なぜ東芝の経営陣は第三者委員会に指摘されたような利益操作を行ったのだろうか。

 この疑問について、金融機関から融資を受ける際に付された「財務制限条項」が契機となって東芝の経営陣が利益操作を行ったと指摘されることがある。09年3月期(08年度)の東芝の有価証券報告書から引用した財務制限条項は以下の通りだ(下線は筆者が加えた)。ポイントは「当該借入れについて期限の利益を喪失する」という部分で、東芝が財務制限条項の条件を満たせなかった場合、期限前に返済を迫られることを意味する。突然、数千億円の返済を金融機関から求められたら、確かに一大事だろう。

 当社が複数の金融機関との間で締結している借入れに関わる契約には財務制限条項が定められており、2008年度の関わる連結財政状態により、当該財務制限条項に抵触する懸念がありましたが、同決算の確定前に、当該金融機関との間で当該財務制限条項の修正を合意しており、現在では当該財務制限条項への抵触は回避されております。しかしながら、2009年度において連結営業損失を計上するなど、今後当社の連結純資産、連結営業損益または格付けが修正後の財務制限条項に定める水準を下回ることとなった場合には、借入先金融機関の請求により、当該借入れについて期限の利益を喪失する可能性があります。さらに、当社が当該財務制限条項に違反する場合、社債そのほかの借り入れについても期限の利益を喪失する可能性があります。

 しかし、決算修正前と後の内容を見てみると、いまいち合点がいかない。期限の利益を喪失する可能性が生じるのは、09年度に連結営業損失を計上するなど「連結純資産」「連結営業損益」「格付け」が、あらかじめ決められた水準を下回った場合である。

 次のグラフは「連結営業損益」について、各年度の修正前後の金額とその修正幅を示したものである。第三者委員会の指摘を受けて概ね下方修正となっているが、09年度以降は営業利益を計上している。

<FONTBOLD />各年度における連結営業利益(修正前後の金額)と修正幅</FONTBOLD> 出所:会社資料をもとにGFリサーチ作成</p><p>

各年度における連結営業利益(修正前後の金額)と修正幅 出所:会社資料をもとにGFリサーチ作成

 08年度の有価証券報報告書からは「09年度の連結営業損失が財務制限条項に該当する」と読み取れるが、決算修正後であっても約717億円の連結営業利益を計上しており、「営業損失」の水準とは程遠い。ちなみに当期純利益についても、08年度、09年度は当期純損失(修正前後とも)であったが、その後は当期純利益を計上している。

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