泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

再考、東芝が不正会計に手を出した理由 GFリサーチ 泉田良輔氏

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 最後に、社長の任期ごとの累計フリーキャッシュフロー(営業キャッシュフローと投資キャッシュフローをネットした金額)についてまとめてみた。下図からは、西田社長時代を除いてフリーキャッシュフローがプラスであったことがわかる。前述したように、各社長時代の5年換算した累計営業キャッシュフローに大きな差はなかったが、西田社長時代の投資が大きかったことが、ここからもわかる。

<FONTBOLD />各社長時代における任期累計のフリーキャッシュフロー</FONTBOLD> 出所:会社資料をもとにGFリサーチ作成

各社長時代における任期累計のフリーキャッシュフロー 出所:会社資料をもとにGFリサーチ作成

 室町社長時代は東芝メディカルの売却によってフリーキャッシュフローが大きくプラスになったという要因はあるが、東芝は西田社長時代を除いてキャッシュを積み上げることができたと評価できる。その西田社長時代におけるフリーキャッシュフローのマイナス部分は借り入れによってファイナンスし、佐々木社長時代の09年度に増資を実施している。

 ここまで2000年度から15年度までのキャッシュフローを振り返ってみた限りでは、お世辞にも資金繰りに余裕があるとはいえない。年度にもよるが単年度の売上原価だけでも4兆から5兆円ほどある。資金回収の日数が長期化するなどすれば、そもそもの売上原価の規模が大きいためキャッシュフローの変動も大きくなる。また、将来の成長のために継続的な投資やM&Aといった非連続的な投資も必要となる。たとえば先端の半導体工場は、導入する設備や生産キャパシティーにもよるが、ゼロから建設するとなると4000億から5000億円といった資金が必要になることもある。M&Aも対象企業の評価や規模にもよるが、ウェスチングハウスの買収は約54億ドル(当時の為替レート換算で約6600億円)の規模となった。東芝は手元資金だけでは足りず、借り入れを活用し、リーマンショック後の財務危機には増資を行い、しのいできた。

 ただし、過去のフリーキャッシュフローに大きな余裕はなくとも、我々の知らない巨額な設備投資やM&Aを計画していなかったのであれば、問題はないレベルだ。ここからはなぜ会計操作が必要だったかを考えてみたい。


【ここまでのポイント】



(1)2000年度から15年度まで、東芝の営業キャッシュフローを歴代社長別に累計してみると、任期の長さを考慮すればどの社長の時代もほぼ同じ水準の営業キャッシュフローを計上している。ただし、06年の米ウェスチングハウス買収など、投資に積極的だった西田社長時代だけフリーキャッシュフローがマイナスになった。その後、08年にリーマンショック、11年に東日本大震災が起こった。
(2)東芝の資金繰りはお世辞にも余裕があるとはいえないが、借り入れや増資によってしのいできた。キャッシュフローの観点では財務上の問題はない。では、なぜ東芝は利益操作をしたのか。

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