泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

再考、東芝が不正会計に手を出した理由 GFリサーチ 泉田良輔氏

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営業キャッシュフロー、安定していたが成長していない

 ここまでは営業キャッシュフローを2つの要素に分解して見てきたが、ここで各社長時代(室町社長時代を除く)の営業キャッシュフロー全体をそれぞれ累計して比べてみたい。次のグラフの青い部分が累計額を示しており、岡村社長時代に累計1兆6000億円を計上していることが分かる。

<FONTBOLD />各社長時代における任期累計の営業キャッシュフロー</FONTBOLD> 出所:会社資料をもとにGFリサーチ作成</p><p>

各社長時代における任期累計の営業キャッシュフロー 出所:会社資料をもとにGFリサーチ作成

 岡村社長時代の累計営業キャッシュフローが頭一つ抜けているが、これは任期が5年だったためである。仮に、他の社長の任期も5年であったと仮定して累計営業キャッシュフローを換算すると、その金額(グラフの破線部分を加えた金額)はどの社長の時代でも1兆6000億円前後で大きな差はない。

 したがって、佐々木社長時代は西田社長時代と比較して成長したのか成長していなかったのか、という議論もあったが、営業キャッシュフローベースでどうかといわれれば、ほぼ同水準の営業キャッシュフローを計上したということになる。

 企業の成長をどの評価軸で行うか、という議論は常にある。一般的には売上高や営業利益、当期純利益であることが多い。ただし、企業が成長しているかどうかを長期的に判断するために「将来に成長するための投資の原資となる営業キャッシュフローが拡大しているかどうか」も重要な判断材料といえる。

 東芝のように、半導体工場や原子力発電を中心とした発電プラントを取り扱う事業が中心となっている以上、大規模な投資や事業に先行する資金繰りも必要である。そうした事業を拡大させるためには、投資などを支える営業キャッシュフローが拡大している必要もあり、またそれが競合企業に対しての競争優位ともなる。

 だが東芝の場合、歴代の社長の実績を見る限りでは大きな差はなく、極めて安定していたとは言えるが、大きく成長していたとは言えない。

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