泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

再考、東芝が不正会計に手を出した理由 GFリサーチ 泉田良輔氏

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 次のグラフは、営業活動で得たキャッシュを示す「営業キャッシュフロー」のうち、主要な項目である(1)当期純利益に減価償却費を加えた額(ここでは「コア営業キャッシュフロー」と呼ぶことにする)と(2)運転資本の増減(受取債権の増減、棚卸資産の増減、支払債務の増減の合計)の推移を示している。コア営業キャッシュフローは各期間における「収益を稼ぐ力」、運転資本は「キャッシュをひねり出す力」をそれぞれ測る指標といえる。

 では、コア営業キャッシュフローと運転資本の増減について、歴代の社長ごとにその傾向を見ていこう。

 岡村社長時代(2000年6月~05年6月)にはITバブル崩壊後、01年度は当期純損失が2500億円を超えるなど、収益としては厳しい状況であった。01年12月には汎用DRAM事業からの撤退も決定している。そのような中、コア営業キャッシュフローが大きく落ち込んだものの、受取債権の回収や棚卸資産の削減によってキャッシュをひねり出し、しのいだ格好だ。それ以降のコア営業キャッシュフローは3000億円弱で推移し、運転資本の増減も落ち着いている。

 西田社長時代(05年6月~09年6月)は、コア営業キャッシュフローが順調に拡大した。2007年度にはグローバルでの景気拡大や円安傾向もあり、2000年度以降最高の水準の5000億円超を達成している。だが2008年度は、リーマンショックの影響を受けて当期純損失が3400億円を超え、コア営業キャッシュフローは2000年度以降で初めてマイナスとなっている。

 佐々木社長時代(09年6月~13年6月)には、コア営業キャッシュフローが2000億~4000億円で安定していた。一方、運転資本の増減に関しては2009年度以降、年を追って悪化している。一部報道(※)で2009年以降に取引会社に対して支払いサイトの延長を要請したとの指摘もある。

(※)小笠原啓『東芝 粉飾の原点 内部告発が暴いた闇』日経BP、p.145

 続く田中社長時代(13年6月~15年7月)と室町社長時代(15年7月~16年6月)はそれぞれ任期が短く、特に室町社長時代の2015年度は決算内容が悪化したため経営状態を比べにくい。とはいえ、田中社長時代から室町社長時代にかけて運転資金の増減については改善がみられる。

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