泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

再考、東芝が不正会計に手を出した理由 GFリサーチ 泉田良輔氏

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国内で稼げない! 日本のグローバル企業の深刻さ

 ここからは、日本のグローバル企業が国内で収益を上げられていない、という重要な問題について考えてみたい。

 下図は東芝、ソニー、日立製作所の単体の売上高を示している。一目でどの企業も単体では成長していないことがわかる。ソニーのように売上高が大きく落ち込んでいるケースもある。07年度に4兆5000億円だったソニー単体の売上高は、たった8年で2兆円強(15年度)へと半分以下になっている。日立製作所単体の売上高も、02年度の3兆円超から15年度の2兆円弱へ、3分の2に減少している。事業売却によって売上高が減少したケースもあるので単純な比較はできないが、売上高の減少は「需要の縮小」とともに「事業領域が減少している」ことも示している。

<FONTBOLD />東芝、ソニー、日立製作所単体の売上高推移</FONTBOLD> 出所:会社資料をもとにGFリサーチ作成

東芝、ソニー、日立製作所単体の売上高推移 出所:会社資料をもとにGFリサーチ作成

 もちろん、「国内需要が弱いから海外で積極的に事業展開をしているのだ」というのがグローバルに事業展開する経営者の思考回路であろう。たしかに、単体の売上高が3分の2から半分以下にまでに減少している中、国内で厚い収益を上げ続けることは無理筋なのかもしれない。

 そこで重要になるのは事業ポートフォリオだ。グローバル企業は、事業ポートフォリオを整理する際に「国内の事業として何を残すのか」をより注意深く検討する必要があったのではないか。国内では、海外と比べて柔軟に雇用規模を調整することが難しい。雇用を維持しつつ利益を確保しなければならない。経営者には、国内事業としてどれを残し、より大きな収益を上げるために海外でどのような企業を買収するか、という難易度の高い意思決定が求められる。

 東芝による06年のウェスチングハウス買収も、そもそもは「ほとんど国内の売り上げしかない原子力事業をどうするか」という課題が出発点となっていた。国内では新しい原子力発電所の建設が以前ほど期待できず、メンテナンス料だけでは原子力事業を長期的に維持できない状況だったのだ。原子力事業から撤退するか、ウェスチングハウスを買収して事業機会を海外に積極的に求めるか、という二者択一の問題が根底にあった。

 しかし、東芝にとって(日本にとっても)不運だったのは、11年3月の東日本大震災で発生した原発事故の影響である。その後、米国のシェールオイルが注目され、原子力発電に対する見方が大きく変わってしまったことも影響している。

 ウェスチングハウスを買収する以前に、こうしたリスク要因を事前に織り込むべきだったと言うつもりはないが、ただ1つ確実に言えることがある。それは、原子力事業にしても半導体事業にしても、「設備投資や建設前の資金調達がカギとなる事業」だということだ。財務体質が強くない企業が継続的に取り組み続けられる事業ではない。東芝は原子力事業と半導体事業の両方を、安定事業ではなく成長事業と位置付ける判断をしたが、肝心な資金調達の裏付けを十分担保しないで進めてきてしまったともいえる。この財務体質の問題は、前回のコラム『シャープ凋落への岐路は、あの戦略転換だった』で取り上げたシャープの液晶パネル事業とも共通する。

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