泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

株価が示すソニーの復活は本物か? GFリサーチ 泉田良輔氏

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 とはいえ2000年代初め、様々な技術の薄型テレビが登場したころの状況は違った。パネルの製造歩留まりが低かったこともあり、グループ企業内でパネルを生産でき、組み立てまでを行う垂直統合型の生産方式を採用する企業が優位にあった。

 薄型テレビの技術が液晶に絞られていき、液晶パネルが台湾や韓国を含めた幅広い企業で生産できるようになり、電子機器の受託製造サービス(EMS)企業が組み立てを担うようになると、水平分業型の生産方式を採用したメーカーが勢力を拡大してくる。

 それに対して、ソニーは2000年代半ばも大型液晶パネルを大規模に自社グループから調達する戦略だった。同社は韓国サムソン電子との合弁で2004年に液晶パネル製造会社S-LCDを設立し、そこからパネルを調達することを決めるが、その調達は2005年まで待たなければならなかった。

 こうしてスマートフォンや薄型テレビの成長に翻弄されたソニーが一矢を報いたのが2007年の業績回復だろう。同社は2006年に第3世代の家庭用ゲーム機「プレイステーション3」を発売。前述のように米国のサブプライムローンによる住宅建設ブームなどもあり、2007年度には営業利益3745億円を達成する。ただし、その後はリーマン・ショックや米国住宅バブルの崩壊もあり、ソニーを含めた国内大手電機メーカーの業績は全般に悪化した。

 それから、2012、2015、2016の各年度に、ソニーの営業利益は回復するが、やはり1997年度の最高益を上回ってはいない。ソニーがこの2017年度(2018年3月期)の営業利益の目標を5000億円としたのも1997年度の過去最高益を意識しているのだろう。

最高益更新のカギを握る総合力

 ここまでソニーの業績をその製品とともに振り返ってきた。では今、ソニーは最高益更新という本物の復活に向けて何をしようとしているのだろうか。下の表は、ソニーの営業利益を事業セグメント別にまとめたものである。2016年度実績とソニー自身による2017年度会社計画を示した。

<FONTBOLD />ソニーのセグメント別営業利益(単位:億円)</FONTBOLD> 出所:会社資料をもとにGFリサーチ作成

ソニーのセグメント別営業利益(単位:億円) 出所:会社資料をもとにGFリサーチ作成

 この表の2017年度会社計画の欄でわかるように、利益面から見たソニーの主力事業は、上場企業でもあるソニーフィナンシャルホールディングスを中心とした「金融」、好調なゲーム販売で収益の基盤となってきた「ゲーム&ネットワークサービス」、高品質なCMOSセンサーを生産する「半導体」の各セグメントである。

 また、2017年度に営業利益5000億円を目指すに当たっての大きな変化は「半導体」「映画」の各セグメントでの営業損失から営業黒字への転換、および「ゲーム&ネットワークサービス」における25%強の増益だ。

 主力事業における2016年度の営業損失は一過性の事象が影響している。「半導体」では、熊本地震による工場の被災(ソニーのCMOSセンサーは熊本中心に生産されている)が原因であり、「映画」は営業権の減損が原因である。2017年度はそうした影響が排除され、業績の大きな回復が可能というのがソニーの計画だ。

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