泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

自動車産業の次の10年、半導体を牛耳るのはインテルかARMか GFリサーチ 泉田良輔氏

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 ARMは、「ARMコア」と呼ばれるプロセッサーIP(プロセッサーの基本設計や命令セット)を開発し、マイコンメーカーにライセンス提供している。マイコンメーカーは、このARMコアを利用してプロセッサーを設計・製造している。スマートフォン市場では、ARMコアのプロセッサーが世界シェアの9割以上を占めるほど普及している。

 自動車関連事業に関するARMの説明資料によれば、ルネサス エレクトロニクスや米フリースケール・セミコンダクタ、オランダのNXPセミコンダクターズ、独インフィニオンテクノロジーズといったマイコンメーカーがARMコアを使用しており、この分野においてもARMのシェアはすでに95%程度あるとみられている。内訳を見ると、インフォテインメント(カーナビなど)以外の領域では5%程度のシェアしかないものの、ARMは十分な存在感を示しているといえる。このほか、米アルテラや米ザイリンクスといったFPGA(※)メーカー、米NVIDIAのようなGPUメーカーもARMコアを使用している。

(※)ハードウェアの再構成が可能なIC。特定の計算処理では、汎用プロセッサーと比べて「単位電力あたりの処理性能」が数倍~数十倍高い。

 現時点でARMの累計ライセンス数は1200を超え、直近2年では毎年120件以上の積み上げがあり、好調だ。ARMはライセンス料を得るとともに、1チップの製造ごとにロイヤルティー料も受け取る。2014年度の売上高構成は、ライセンス料が全体の45%、ロイヤルティー料が46%となっている。

 実はARMは、このプロセッサーIPに関係する使用料を「現状の数倍」に値上げしようと計画している。既存のIPをバージョンアップしたり、プロセッサーやグラフィックに関連する複数のIPを組み合わせたりすることで、ライセンス料や1チップ当たりのロイヤリティー料を引き上げていくのだ。マイコンメーカーにとっては大きなコストアップにつながる。

 このARMの動きに対して、マイコンメーカーは調達規模を大きくすることで価格交渉力を獲得しようと考えているようだ。最近のマイコンメーカーによる再編の動きを「ARMに対する価格交渉力を確保するため」とみれば、非常に合理的に映る。

ARMの次の標的は「インテルの生命線」

 ARMが現在のような確固たるポジションを確立できたのは、スマートフォンやタブレットなどのアプリケーションプロセッサーで大成功を収めたからだ。前述したように、ARMコアのプロセッサーはスマートフォン市場で世界シェア9割以上を占めている。インテルのモバイル向けCPUが苦戦する中で、ARMの圧勝といえるであろう。PC市場の隣にあるスマートフォン/タブレット市場を取り損ねたことは、インテルにとって痛恨の敗北であったに違いない。

 モバイル機器向けプロセッサーIPで圧勝したARMが次に目指すのは、データセンターやクラウドサービスに必要なサーバー、そして通信事業者や企業向けネットワーク機器に使われる半導体だ。このカテゴリーにおけるARMのIPのシェアは、サーバーに関しては1%未満、ネットワーク機器に関しては10%程度と、ARMにとっては「まだこれからの市場」だが、着々と布石を打っている(詳細は後述)。

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