泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

巨人GEが覚醒? インフラビジネスの競争環境に影響 GFリサーチ 泉田良輔氏

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 余談だが、ドイツの「インダストリー4.0」が日本で注目され始めている一方で、GEのインダストリアル・インターネットも2011年のアニュアルレポートには登場しており、それなりに時間も経過している。両者の違いは、GEのインダストリアル・インターネットが主に自社製品の「運用効率」を追求するものであるのに対し、インダストリー4.0は「製造プロセスの効率化」を求めるものとなっている。それぞれが将来、運用と製造のどちらで付加価値を高めようと考えているのか、違いがわかって面白い。日本企業がどちらに向かうかといえば、インダストリー4.0の方が相性は良さそうだが、GEと競合する日本企業はそうも言っていられない。

 さて、2014年のアニュアルレポートによれば、GEがICT領域に注力していることがうかがえる。GEは自社製品の出荷を通じて、すでに1000万個のセンサーを稼働中の産業機器に据え付けており、5000万項目のデータを集めているとしている。

 具体的にデータがどのように活用されているかといえば、航空機用エンジン事業では、1000万回のフライトデータを収集し、航空機のメンテナンスに活用しているという。風力事業では、各種のデータを分析することで、風力発電の出力を5%向上させ、事業の収益性を20%も向上させたという。いずれも過去の稼働データなどを分析し、故障を予測したり効率を改善したりすることがポイントだ。このような取り組みにより、GEは自分たちが「ICTと製造業の知見を融合させた唯一の存在」だと主張している。しかし、日本にも日立製作所や三菱電機のような企業がある。GEに「唯一」と呼ばせてはいけない。

 このように、GEという巨人が大きく動き出すことで、インフラ事業の競争においては、資金調達、ICT、ハードウエアの3つの要素がさらに重要となってくる。

 GEはインフラ事業の競争力をより高めるために、データ解析、ユーザーインターフェース、サイバーセキュリティー、アジャイル開発(※)の専門家を集めている。これらは、これまで日本の製造業のモノづくりの中で、コアとして必要とされてきた領域ではない。つまり、ここでも競争領域がシフトしている。競争領域をシフトさせながらそれらを複雑に組み合わせてくるのは、米国企業が最も得意とする戦略だ。GEの覚醒は、まだ始まったばかりである。

(※)ソフトウエアを短期間で開発するための手法

泉田良輔 (いずみだ りょうすけ)
 GFリサーチ代表。個人投資家のための金融経済メディアLongine(ロンジン)編集長、および株1(カブワン)投信1(トウシンワン)の監修も務める。それ以前はフィデリティ投信・調査部にて日本のテクノロジーセクターの証券アナリスト、日本生命・国際投資部では外国株式運用のファンドマネージャーとして従事。慶応義塾大学大学院卒。著書に『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』。東京工業大学大学院非常勤講師。

キーワード:経営、企画、技術、製造、経営層、営業、管理職、プレーヤー、経営、イノベーション、国際情勢

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