泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

独占を狙うアマゾン、新たな事業モデルの布石に GFリサーチ 泉田良輔氏

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 しかし、小売り注文をインターネットで受け付け、在庫を一括で管理し、随時顧客に配送できるシステムを完成することができれば、小売り段階での在庫日数を減らし、バリューチェーンを短縮化できる。バリューチェーンに参加する企業にとって、これは大きなメリットとなる。なぜなら、資金回収サイクルが短期化すれば研究開発や新しい商品開発に資金を回せるようになるため、そのバリューチェーンに参加していない企業よりも有利になるからだ。

「アマゾンがいるバリューチェーン」を競争優位に変える

<FONTBOLD />アマゾンのキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の内訳</FONTBOLD></p><p>データ出所:SPEEDAをもとにGFリサーチ作成

アマゾンのキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の内訳

データ出所:SPEEDAをもとにGFリサーチ作成

 バリューチェーンのデザインは「事業モデル」とも言い換えることができる。アマゾンは、競合するリアルの小売りやインターネット企業に対して、バリューチェーンの最下流にいることを競争優位に変えようとしているのではないだろうか。右のグラフは、アマゾンのキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)を示したものである。

 CCCを簡単に説明すると、売上債権、棚卸資産、買入債務それぞれの回転日数を計算し、仕入れから販売までの過程で「何日で現金化できるか」を示したものである。アマゾンの場合は、買入債務の支払いが売上債権や棚卸資産の回収と比較して長いため、2013年はマイナス29日程度である。これは事業を始めると同時に「29日分の現金が手元にある」という非常に資金繰りがうまいことを示している。

 そうしたアマゾンではあるが、棚卸資産回転日数をみると年々上昇トレンドにあることが分かる。CCCを改善しようとするなら、売上債権や買入債務の回転日数をさらに改善する選択肢もあるが、買入債務については100日を超えており、もはや限界であろう。

 アマゾンは世界中に巨大な物流倉庫を抱え、在庫管理が上手なように思われているが、2013年のアマゾンの棚卸資産回転日数49日は家電を販売するためにリアル店舗を抱えるベストバイの62日に対して圧倒的に良いという水準ではない。

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