泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

独占を狙うアマゾン、新たな事業モデルの布石に GFリサーチ 泉田良輔氏

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バリューチェーンの最下流にあるアマゾンの勝機

 現状では、アマゾンのkindleやfireタブレットが十分な成果を上げているとは言い難いので、「ハードウエアをもともと扱っていなかったアマゾンが、後発プレーヤーとして参入する意味があるのか」という疑問もあるだろう。だがアマゾンは、何としてもバリューチェーンの最下流である小売りを押さえ、強い影響力を発揮したいのだ。

 小売りを押さえることの意味は大きい。たとえば、iPhone 6や同Plusの販売台数が3日間で1000万台に達したという報道がある。このニュースの意味をひも解くと、バリューチェーンにおける小売りチャネルの存在感の大きさがわかる。仮にスマートフォンの販売価格が7万円、その製造原価が3万円だとしよう。この時、3日間で1000万台販売したとすると、スマートフォンメーカーは自社のバリューチェーン内に3日で3000億円の資金が必要になる(実際には、バリューチェーンには、小売店の在庫、輸送中の製品、仕掛品、材料なども含まれるため、さらに大きな資金が必要である)。

 今回のiPhoneのように、世界規模で販売される端末の台数規模は増加している。新規参入者が既存のプレーヤーに販売規模で勝とうとするのであれば、バリューチェーンにおいてそれ以上の資金調達が必要となる。いまや、世界でハードウエアを販売する企業は、資金がなければ競争の土俵にも立てず、ハードウエアを扱うことのできるプレーヤーの数そのものも少なくなっている。

 アマゾンは、こうした状況で同社の勝機が高まったと考えているのではないだろうか。

<FONTBOLD />アップルのバリューチェーンにおける棚卸資産回転日数</FONTBOLD></p><p>データ出所:SPEEDAをもとにGFリサーチ作成

アップルのバリューチェーンにおける棚卸資産回転日数

データ出所:SPEEDAをもとにGFリサーチ作成

 右のグラフは、アップルのバリューチェーンを簡素化し、その棚卸資産(在庫)回転日数を積み上げたものである。アップルは、在庫をほとんど持たず、資金繰りが巧みな会社なので、自社の在庫日数が重くなることはない。しかし、アップルのバリューチェーンの川上と川下では、新商品を発売する際などには、一時的にとはいえ、かなり重い在庫を抱えることになる。

 たとえば、アップルの製品と同等かそれ以上の製品を世界で販売しようと思えば、そのバリューチェーンをサポートできるサプライヤーやEMS(電子機器の受託製造サービス)に参加してもらわなければならない。もし世界で同時発売するようなハードウエアを取り扱っていたり、新製品の量産をしながら、別の新製品の研究開発を行ったりする時などは、材料メーカーなどを含むさらに長いバリューチェーンになるだろう。バリューチェーンが長い、つまり在庫日数が長くなるということは、バリューチェーンに参画するためには強固な財務体質もしくは資本調達の選択肢を持っていなければならないことになり、参画者は限られることになる。

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