泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

独占を狙うアマゾン、新たな事業モデルの布石に GFリサーチ 泉田良輔氏

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アマゾンがPBハードウエアを手掛ける理由

 アマゾンは、小売りを押さえ、独占に近い状況を生み出すことに、どのようなメリットを期待しているのだろうか。1つは上記の「サプライヤーへの強力な価格交渉力」だが、もう1つある。それは、いわゆるプライベートブランド(PB)商品の拡大であろう。

 この点を理解しやすいように、日本のコンビニエンスストアを例に考えてみたい。コンビニを頻繁に使う方はお気づきと思うが、大手コンビニチェーン店ではパッケージにコンビニ名が記載された商品の棚が増えてきている。こうした商品をPBと呼ぶ。こうしたPBの中にはいわゆるナショナルブランドが生産している商品もある。

 なぜこうしたことが起きるのであろうか。集客数の多いコンビニは、売れ筋商品を安定的かつ安価で調達したい。そのために生産業者のキャパシティーを事前に確保しようとする。また、そうしたコンビニは、蓄積した顧客データをもとに商品のスペックや規格まで踏み込んだ品ぞろえを拡大することで、さらに顧客満足度を上げ、競合企業との差別化をしたいとの思惑がある。一方、生産業者であるナショナルブランド側も一定の販売量が期待できるため、コンビニが要求する条件で納入するメリットがある。

 このように、小売りを押さえた企業ではPB化が進むという流れがある。アマゾンも同じである。

 もちろん、アマゾンが日本のコンビニエンスストアのように食品や日用品のPB化を狙っているとは考えにくい。私の見立てでは、電子書籍リーダー「kindle」のようなガジェットの拡販を考えていると思う。

 なぜEコマース専業のアマゾンがハードウエアの領域に手を広げるのかというと、それはアップルの垂直統合モデル(※)を強く意識しているからである。アップルは、ハードウエアであるiPhoneのユーザーインターフェースと、ネットワークを経由して活用することのできるiTunesやAppStoreといった課金可能なコンテンツプラットフォームを掛け合わせることで、ハードウエアとサービスプラットフォームの両方の価値を上昇させて大成功を収めた。その結果、インターネット企業といえどもハードウエアを無視することができない競争のルールが出来上がってしまった。

(※)詳細は『日本企業の興亡をかけた「垂直統合化」の戦い』を参照。

 アマゾンは幅広い商材、コンテンツを調達し、課金プラットフォームを運用しているが、ユーザーエクスペリエンスとも呼べる購買体験はPC/スマートフォンのデザインに依存している。逆に言えば、アマゾンが追い求めるユーザーエクスペリエンスを最大限に高めるためには、自分でデザインしたハードウエアとユーザーインターフェースを作り出すしかない。そうした中での解がkindleやfireタブレットといったハードウエアの投入であると考えている。

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