泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

独占を狙うアマゾン、新たな事業モデルの布石に GFリサーチ 泉田良輔氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 では、アマゾンはどこまで収益性を犠牲にして売上高規模を狙うのだろうか。

 私見では、ウォルマートの売上高規模を当面の目標とし、その後は圧倒的な売上高規模とポジションを狙っているようにもみえる。ここで、冒頭で紹介したグラフをもう1度見てほしい。過去5年間の売上高の年平均成長率を使って、アマゾンがウォルマートの売上高をいつ抜くのか試算したものだ。過去5年の年平均成長率を使うのは乱暴な前提だという意見もあるだろうが、過去10年の年平均成長率を過去5年のそれが上回っていることから、ベゾスは売上高の成長にこだわっているのが見てとれる。

<FONTBOLD />過去5年の年平均成長率を前提とした売上高推移の試算</FONTBOLD></p><p>出所:SPEEDAをもとにGFリサーチ作成

過去5年の年平均成長率を前提とした売上高推移の試算

出所:SPEEDAをもとにGFリサーチ作成

 試算の結果は、2021年度にアマゾンがウォルマートの売上高を抜く状況になりそうだ。その時のアマゾンの売上高は70兆円(1ドル=108円換算)を超えることとなる。あまりにもシンプルな試算であるが、「ベゾスであれば成し遂げてしまうかもしれない・・・」と考えさせるところが恐ろしい。

 グローバル市場でリアルの小売りをすべてネットに取り込むのは無理だろうが、圧倒的な売上高を背景にウォルマートが手に入れた「サプライヤーへの強力な価格交渉力」と「調達面での交渉力」を、将来のアマゾンも獲得できるはずだ。現在のアマゾンには、同じ商品でも納入業者により異なる価格が提示されているものもあるが、今後アマゾンの売上高がさらに大きくなれば、ウォルマートが実現している「Always Low Prices」と同様な状況を実現できるだろう。

 ウォルマートの「Always Low Prices」には2つのメリットがあると考えている。1つは、消費者に対して「常に安いものがウォルマートにあるので、買い物の際にはウォルマートを思い出して来てほしい」というメッセージを出せること。もう1つは、納入業者に対して「はじめからウォルマートが安値で販売できる価格で交渉するぞ」というメッセージを送れることだ。

 結果として、ウォルマートはベンダーとの間で無意味な価格交渉を省くことができているのではないか。価格交渉を1度でも経験した人にはわかるであろうが、ロジックを超えたところの議論に時間が費やされ、非効率であることが多い。このように、ウォルマートは規模とともに効率性も追及しているとみている。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。