泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

独占を狙うアマゾン、新たな事業モデルの布石に GFリサーチ 泉田良輔氏

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 もちろん、独占禁止法が存在するため(これは日本に限らず世界で共通した産業構造のガバナンスシステムであるが)、声高に独占を目指すことはできない。しかし、成長する企業が規模を追い、結果的に独占、もしくはそれに近い状態になっていることもある。そうした企業が現れるまで覇権を握っていた企業は独占状態を崩され、新たな企業の独占が始まる。このような例は特にハイテク業界では枚挙にいとまがない。

 今回はそうした視点から、世界の小売業で圧倒的ナンバーワンのウォルマートに挑戦しようとしているアマゾンのビジネスについて、その狙いと可能性について考えてみたい。そこには、アマゾンの新たな事業モデルの姿も見え隠れする。

アマゾン、売上高30%成長を続ける驚異

 アマゾンをどのように評価するべきなのか、株式市場では常に意見が分かれるところである。アマゾンは、売上高の成長率が過去10年間の年平均成長率(CAGR)で30%と極めて高い。その半面、営業利益率(ここではオペレーティングインカムを営業利益としている)が過去3年で見れば1%台という極めて低い水準にとどまっている。企業の収益性やROE(自己資本利益率)などの指標を重要視することが多い米国の株式市場では、アマゾンの経営手法はもろ手を挙げて受け入れられていないのが実情である。

 ただし、現状の投資リターンが低いことを、アマゾンの社長兼CEOであるジェフ・ベゾスは意識的に狙っているとみえる。足元の収益性を高めるよりも、売上高成長を求め、将来の事業機会の拡大を狙っているのだろう。

 アマゾンは創業時より書籍のEコマース事業を拡大してきたが、2013年末時点で書籍・音楽・ゲーム・デジタルコンテンツなどのメディア事業の売上高は全体の29%に過ぎない。売上高の66%を占めるのは家電製品や一般雑貨などである。したがって、アマゾンの競合企業は既にバーンズ・アンド・ノーブルといった書店だけではなく、ウォルマートやベストバイといったGMS(総合スーパー)、小売り専門店という状況になっている。

 アマゾンの恐ろしいところは、既に小売り事業者として世界トップ10に入るほど売上規模が大きくなっているのに、成長率がまったく鈍化していない点だ。しかも、過去10年における売上高の年平均成長率は30%、最近5年のそれは31%と、わずかながら成長が加速している。

 一方、ダントツの売上高を誇る世界最大手のウォルマートは、過去10年の売上高成長率が6%、最近の5年だと3%というように、売上高規模の拡大に伴い成長率が鈍化している。日本の小売業を代表するセブン&アイ・ホールディングスは、過去5年で見ると円建ての売上高はほとんど横ばいで成長していない。

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