泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

トヨタは大丈夫か、自動車産業の「弱点」を狙うイノベーター GFリサーチ 泉田良輔氏

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 私はソフトバンクがロボットを発売するという発表を聞いても、「孫社長の最大の狙いは米国での自動車ビジネスだろう」という見方は変わらない。今回の発表では、ロボットが音声認識の機能を持ち、ユーザーがより多く話しかければクラウドに情報が蓄積され、それに応じて学習すると発表されている。

 この前提に立てば、日本でロボットを発売するのは「実験に近い」といえる。なぜかといえば、日本語を話す人の人口は限られているので、英語での蓄積量と比べて優位性がないからだ。次々世代自動車も音声認識機能を持つとすれば、英語人口の優位性や自動車の利用時間の長さから「米国発でビジネスを立ち上げる」というのが合理的である。

 ところで、こうした想像とは逆の方向から、グーグルが通信会社や移動通信システムを直接抱え込んでいく可能性もある。ただし、自動車向け設備投資の負担が大きい間は現状のように通信会社に任せるであろう。また、通信会社同士が、たとえばグーグル製自動車を販売するために通信インフラの設備投資競争になれば、グーグルはその結果としてのインフラの利便性を享受するだけでよい。その間、グーグルはOS(基本ソフト)を含むハードウェアである自動車のデザインとアプリケーションプラットフォームを優先的に整備するであろう。本格的な通信インフラを手中に収めようとするのはグーグル製自動車の普及率が高まってからかもしれないし、最後まで手を出さない可能性もある。

インフラの設備投資にタダ乗りするイノベーションが最もスマート

 これまで成功しているイノベーターの多くはインフラを上手に活用している。そもそもインターネットというインフラがなければ、グーグルも存在し得ないし、移動通信インフラ、特に3G(第3世代)以降のインフラ整備がなければiPhoneはここまで売れていない。

 実のところ、2G(第2世代)対応のiPhoneは売れ行きが悪かった。いかに優れたハードウェアであっても、ネットワークを活用した事業モデルを持っている以上、通信インフラとの相性が重要であることの証拠である。インフラの設備投資にタダ乗りする形でイノベーションを起こすのが最もスマートな攻め方だが、グーグルにとっても、まだ見ぬ次々世代自動車向けインフラにどのように関わっていくかがポイントになる。

 このように、次々世代自動車を普及させるためにはインフラが鍵となる。「鶏が先か、卵が先か」という議論があるが、私はインフラなくしてイノベーションを起こすのは難しいと考えている。次々世代自動車の場合には、単に次々世代自動車向けの通信インフラを整備すればよい、というわけではない。自動車を安全に走らせるために道路の整備も必要となるのであれば、都市デザインから関わることとなる。

 トヨタや日本の自動車メーカーの活路は、やはり都市デザインとそのそうした自動車をどのように使うかというライフスタイルの提案にあるだろう。トヨタの歴史を踏まえ、明確にICTの重要性を認識している豊田章男社長は、次の20年に向けてさらに大きな構想を打ち出さなければならない局面に来ている。

泉田良輔 (いずみだ りょうすけ)
 GFリサーチ代表。個人投資家のための金融経済メディアLongine(ロンジン)編集長、および株1(カブワン)投信1(トウシンワン)の監修も務める。それ以前はフィデリティ投信・調査部にて日本のテクノロジーセクターの証券アナリスト、日本生命・国際投資部では外国株式運用のファンドマネージャーとして従事。慶応義塾大学大学院卒。著書に『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』。東京工業大学大学院非常勤講師。

キーワード:経営、企画、技術、製造、経営層、営業、管理職、プレーヤー、経営、イノベーション、国際情勢

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