泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

トヨタは大丈夫か、自動車産業の「弱点」を狙うイノベーター GFリサーチ 泉田良輔氏

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 自動車メーカーの在庫日数を「バリューチェーンの長さを代表する指標」と仮定したとき、在庫日数と付加価値の関係を示すのが次の図である。

<FONTBOLD />自動車メーカーの在庫日数と粗利益率</FONTBOLD></p><p>出所:SPEEDA、会社資料をもとにGFリサーチが作成

自動車メーカーの在庫日数と粗利益率

出所:SPEEDA、会社資料をもとにGFリサーチが作成

 この図から分かるのは、バリューチェーンが長ければそれだけ粗利益率が高いということだ。この点について、「強いブランドは利益率が高いから、長いバリューチェーンを維持できている」という見方もあるだろう。しかし、私はバリューチェーンが長いことにより、いわゆる「すり合わせ」をはじめとした改善の余地が生まれ、従来型ものづくりの競争優位に貢献していると考えている。したがって、「バリューチェーンが長いことが完成車メーカーの付加価値である粗利益率を高くしている」と考えている。

 これまでの自動車産業の事業モデルを崩そうとするイノベーターが最初に狙うとすれば、間違いなく欧州の自動車メーカーが持っている「長いバリューチェーン」である。アップルのように短くて効率的なバリューチェーンを作って攻撃しようと企むのではないか。

 この攻撃が成功すれば、その後はiPhone登場後の電機産業のように、自動車産業の勢力図が一気に塗り替えられる可能性がある。

 ただし、イノベーターが仮に電気自動車のモーター、インバーター、バッテリーの調達と完成車の組み立てのバリューチェーンを短くできる仕組みを持ち込んだとしても、既存の自動車メーカーはこれまでのバリューチェーンの強みを無力化させないように動くであろう。冒頭の図で示した第2象限の次世代自動車の競争のルールとなる「歩行者を含めた安全性」の評価軸をバリューチェーン内の様々なところに組み込むのだ。そうすることで、イノベーターに対し、模倣しにくい仕組みを作り上げる(参入障壁を高くする)ことができる。

 例えば、自動車には安全性に関する国際標準があり、国・地域の監督官庁との折衝もある。これらはイノベーターにも扱える領域ではあるが、参入障壁になる。既存のプレーヤーに対し、新規参入者であることが多いイノベーターが規制に対して短期間に対応したり、キャッチアップしたりできる保証はどこにもない。参入障壁を越えるには、イノベーターが既存プレーヤーを買収することが一番の近道になるであろう。

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