泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

トヨタは大丈夫か、自動車産業の「弱点」を狙うイノベーター GFリサーチ 泉田良輔氏

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 私自身は、デバイスが競争優位のポイントとなる前述の第2象限において、日本の自動車メーカーがデバイスの機能とそれらを組み合わせたシステムによって自動車の安全性を向上させられれば、まだ競争優位を維持できると考えている。繰り返すが、ここでいう安全性とは運転者だけではなく歩行者も含めた安全性である。

 こうして見てくると、「電気自動車なら新興国でも安く組み立てられる」という理由だけで、新興国の自動車メーカーが日本の自動車産業にとって脅威になるという指摘は的を射ていない。新興国で安く組み立てたところで、世界標準の安全性が担保されていなければ、先進国の消費者には選ばれない。

 一方で、日本の自動車メーカーは長いバリューチェーンの中で卓越した「ものづくり」を続けてきたが、今後はそうもいかないであろう。歩行者を含めた安全性が一層強く求められるのであれば、「デバイスとそれらを制御するシステムの付加価値」は自動車全体の中で大きな比率を占めるようになる。その安全性の領域は、燃費効率を競ってきたものづくりの領域とはかなり異なるものである。

イノベーターが狙う自動車メーカーのバリューチェーン

 さて、冒頭で述べたように、このように競争領域がシフトするフェーズでは、イノベーションを持ち込んで新しい競争のルールを確立するプレーヤーが現れるものである。そのイノベーターの側に立って、既存の自動車産業の事業モデルを見ると、どう見えるのだろうか。

 これまでの歴史を振り返れば、イノベーターはバリューチェーンに楔を打ち込むのが常とう手段である。実際、自動車産業のバリューチェーンは電機産業に比べると長い。従来はこれが強みでもあったが、今後はバリューチェーンの長さが「弱点」にもなり得る。

 まずは、日本の自動車産業のバリューチェーンを理解するところから始めたい。次の図は、日本の自動車産業が何日分の在庫を積み上げているか、そのイメージをつかむためのものである。ここではトヨタ自動車を例に、自動車の電装部品という切り口から、シリコンウエハー、マイコン、電子部品モジュール、完成車までの在庫日数を積み上げることで、バリューチェーンの長さを理解しようと試みている。この図から分かることは、現在の在庫日数は280日程度あり、完成車や部品モジュールの在庫よりは、材料や半導体の在庫日数が長いということが分かる。

<FONTBOLD />日本の自動車産業のバリューチェーンにおける在庫日数</FONTBOLD></p><p>出所:SPEEDA、会社資料をもとにGFリサーチが作成

日本の自動車産業のバリューチェーンにおける在庫日数

出所:SPEEDA、会社資料をもとにGFリサーチが作成

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