泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

空海、利休、ジョブズ---成功の共通点 GFリサーチ 泉田良輔氏

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 ジョブズが熱心に禅を学んでいた話はよく知られているが、禅寺の枯山水(水を使わずに石や砂で山水を表現する庭園様式)を持ち出すまでもなく、「何を残して、何を捨てるか」という作業は、古来、日本人の得意技だったはず。日本の電機産業の凋落ぶりを見て、その原因をイノベーション不足に求める声は多いが、真言密教や茶の湯の歴史を振り返れば、イノベーションが不得意だったのではなく、「イノベーションを生み出す環境の整備が十分ではなかった」というだけの気がしている。

次世代のインターフェース、茶の湯にヒントあり?

 現在、メガネ型や腕時計型のウエラブルデバイスが盛んに開発されている。新しいユーザーインターフェースを求めているといえる。アップルはiPhoneでSiriという音声認識機能に挑戦してみたが、使われ方をみれば今ひとつである。そのほか、視線やジェスチャーなどの入力インターフェースもあるが、アナリストの立場で言うと心もとないと感じる。これまで振り返ってきたように、アップルの成功には歴史的に見て「王道」ともいえる背景がある。しかし、それと比較して視線やジェスチャーにはそうした背景がないのだ。

 ここまでアップルの成功の背景について、真言密教や茶の湯と共通する点を挙げてきたが、そこを参考に次のインターフェースとして興味深いのが触覚である。

 茶の湯では、道具を拝見するというプロセスがある。ときに茶会で使った道具を客の間で回し、手に取って感じる作業である。スマートフォンやタブレットPCのように表面が固く冷たいものに指先だけで触れるのは多くの人が飽きているのではないだろうか。茶の湯の拝見では、茶入、茶碗、茶杓などのハードウェアでも材質が違っているものを手に取る機会があり、仕覆(茶入などを包む装飾的な布袋)などはソフトウェアともいえ、そこから得られる視覚と触覚、場合によっては亭主が語るストーリーを聴覚でインプットしながら新しい体験を得る。

 ハードウェアというのは、取り扱いやすく大量生産には向くが、一方では変化がなく飽きられやすい。私見だが、ハードウェアでありながら触覚により新しい体験が得られるようなものがあれば面白いなと思う。たとえば触感が変化するパーツ(タッチパネルなど)があり、それをユーザーインターフェースとするようなハードウェアなど、いかがだろうか。

泉田良輔 (いずみだ りょうすけ)
 GFリサーチ代表。個人投資家のための金融経済メディアLongine(ロンジン)編集長、および株1(カブワン)投信1(トウシンワン)の監修も務める。それ以前はフィデリティ投信・調査部にて日本のテクノロジーセクターの証券アナリスト、日本生命・国際投資部では外国株式運用のファンドマネージャーとして従事。慶応義塾大学大学院卒。著書に『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』。東京工業大学大学院非常勤講師。

キーワード:経営、企画、技術、製造、経営層、営業、管理職、プレーヤー、経営、イノベーション、国際情勢

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