泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

空海、利休、ジョブズ---成功の共通点 GFリサーチ 泉田良輔氏

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 アップルの世界ではハードウェアが重要な位置を占めているが、これがICT(情報通信技術)産業でコンセンサスとなったのは、iPodとiPhoneの成功以降のことである。アップルはこだわり抜いたハードウェアとしてMacを販売してきたが、その他のPCをみれば「米マイクロソフトのOSと米インテルのCPUが搭載されていれば、どのメーカーのPCでも機能の差は大きくない」という時代がしばらく続いていた。その当時のマイクロソフトなら、SurfaceのようなタブレットPCを開発したり、ノキアの携帯事業をしたりするなど、「ハードウェア」を扱うようになるとは夢にも思っていなかったであろう。

 しかし、アップルがハードウェアをビジネスシステムに組み込み、コンテンツおよびアプリケーションプラットフォームと接続することで、システム自体の競争優位が確立された。結果、競合企業はハードウェアに真剣に取り組まなければならなくなった。

今の競争では、日本古来の得意技が発揮されていない

 EMS(受託製造サービス)やファウンダリーをはじめとする製造インフラが世界で整備されたことで、ハードウェアそのものの価値が下がったとみなされた時代は確かにあった。スマイルカーブ(※8)で代表されるように、製造、特に組み立ての付加価値は最も低いものとされている。

(※8)バリューチェーンの上流(企画や素材・部品製造)と下流(流通、保守など)では利益率が高く、中間(製造、組み立て)では利益率が低い現象を指す。微笑んだ口元のようなカーブを描くことから「スマイルカーブ」と呼ばれる。

 しかし、実際はハードウェアの機能、特にユーザーインターフェースに競争優位性がなければ、ハードウェアとしての寿命は短く、ネットワークを活用した使い勝手が悪ければ全く評価されない時代になった。まさに、今はハードウェアへの熱量がもっとも高まっている状況なのかもしれない。米グーグルが自動運転車やロボットの開発に取り組んでいること、そして米アマゾンが電子書籍端末のキンドルを販売し、無人航空機を物流に活用するという話が出ていることも同様の背景によるとみている。

 日本はものづくりという言葉に代表されるように、ハードウェアには強いとされている。ハードウェアを生み出す力があるとすれば、現在世界の覇権を握る企業の"お決まりの事業モデル"ともいうべき「ハードウェアとネットワークによるシステム全体での競争」においては有利なポジションにいるはずである。

 しかし、ハードウェアだけを見てデザインをするのと、システムの中でのハードウェアをデザインするのとでは大きく異なる。システムの中でのデザインには必ずトレードオフの問題が付きまとうので、最後まで調整が必要となる。つまり、「何かを選択し、何かを捨てる」という作業である。

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