泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

空海、利休、ジョブズ---成功の共通点 GFリサーチ 泉田良輔氏

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 はじめに、アップルの事業モデル(システム)とその強さについて振り返っておきたい。アップルはユーザーインターフェースにこだわり、先端技術の目利きに優れ、量産可能なデバイスの調達とその組み合わせを短いサイクルで繰り返すことにより、ユーザーにとって目新しいハードウェアの使い勝手をデザインしてきた。これが1つめの競争優位である。

 また、そのハードウェアをネットワークにつなぎ、コンテンツやアプリケーションプラットフォームを活用することでシステム全体の使い勝手の向上に成功した。これが2つめの競争優位である。こうしたシステムデザイン、つまりは技術やプラットフォームを組み合わせる「編集作業」とその「運用」がアップルの競争優位といえる。

 次に、空海の歴史を振り返ってみる。空海に関して特筆すべきは、日本人である空海が中国・長安の青竜寺で密教僧の恵果から「胎蔵界・金剛界の両部の奥義(※1)」を学び、経典から仏像、仏画、法具に至るまで必要なものをすべてそろえて持ち帰ったことである(※2)。また、空海の真骨頂はその持ち帰った両部の編集作業を通じ、ロジック(論理)を背景にシステムを構築し直したことにある。空海の師である恵果に両部をまとめた著述がないことから、空海の編集作業を通じて、真言密教というシステムが完成したとする意見が見受けられる(※3)。

 さて、ここで空海とジョブズの共通点に言及する。この2人の共通点が有能な編集者であることは前述したとおりだが、そのほかに大きな共通点が2つある。それは、「文字へのこだわり」と「アイコンの重要性」を認識していたことだ。

 空海はいわゆる三筆として知られているが、ジョブズもフォントやカリグラフィー(文字を美しく表現する手法)にこだわっていたことで有名だ。2人とも文字の持つ力、つまりメディアとしての重要性を認識していたといえる。文章を起こす前の段階で、メッセージを伝えるための準備がいかに大切であるかを認識していたのだろう。

<FONTBOLD />真言密教の金剛界の世界を象徴する曼荼羅</FONTBOLD>

真言密教の金剛界の世界を象徴する曼荼羅

 アイコンの重要性については、「真言秘蔵の経疏は隠密にして、図画を仮らざれば相伝することは能はず」という恵果の言葉を空海が言い伝えている。経典だけでは真言密教の教えを伝えきれないので、図画を用いて両部の世界観を表現する必要がある、という意味である。一般仏教と差別化するために、密教には象徴表現が必要だったのである(※4)。真言密教では金剛界・胎蔵界の2つの曼荼羅を通して世界の原理を図式化して説明しようとしている。曼荼羅では、まさに大日如来を中心に、仏菩薩や神々をアイコンとして一定の秩序に従って配置し、密教の世界観を象徴的に構図化している(※5)。

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