中小企業の「見つめ直す経営」

お菓子工房「手づくりの生産管理」で飛躍~ルポン~ 日本政策金融公庫総合研究所 研究員 長沼 大海氏

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 群馬県太田市の住宅街の一角に店舗を構える「お菓子工房ルポン」。今日も店の周りには、バターの焼けた香ばしいにおいが漂っています。同社のコッペパンラスクは、1日に4000個も生産されているそうです。発売当初は利益があがらなかったというこの商品を、同社は生産管理の工夫で主力商品に引き上げました。

ラスクの商品化にチャレンジ

 同社は、ラスクをはじめとした焼き菓子と、ロールケーキなどの生菓子を販売する洋菓子店です。食感が自慢の「コッペパンラスク」は、自家製のコッペパンを切り出し、一つ一つ手づくりしているのが特長です。定番のブラウンシュガーに加え、ガーリック、きな粉などの味をそろえ、幅広い世代から好評を得ています。

 同社の創業は1949年。梶塚謙社長の父が給食用のパンを製造する「梶塚パン」を立ち上げたのが始まりです。東京の洋菓子店で修業した梶塚社長は90年に入社し、新事業として「お菓子工房ルポン」を開店しました。ロールケーキがヒットするなど順調に軌道に乗り、ピーク時は本店のほかに、太田市内のショッピングセンターに3店舗を出店。2009年には現社名に変更し、洋菓子専門店となりました。

 しかし新たなスタートを切った矢先、壁に直面します。洋菓子づくりに欠かせない生クリームやアーモンドの価格が高騰し始めたのです。また、リーマン・ショック後の不況の影響から売り上げもピーク時の半分まで落ち込みました。やむなく不採算店舗を閉鎖。さらに商品構成も見直して、利益を取れる新商品を開発することにしました。それが、ラスクです。生クリームを使わず材料費を抑えられる点に注目しました。

 他店と差別化できないかと社内で意見を募ったところ、父がつくっていた給食用のコッペパンをラスクにするアイデアが出てきました。硬いフランスパンをカリカリに焼き上げたものが通常のラスクです。一方、コッペパンは小学生からお年寄りまで食べられる、ふんわりと柔らかいパンです。これを焼き上げることで、サクサクの軽い食感に仕上がりました。販売を開始すると口コミが広がり、すぐに人気商品になりました。ホームページにアクセスが集中して県外からも注文が相次ぎ、生産が追いつかないほどだったそうです。

生産方法を見つめ直す

 しかし、順調な売れ行きに対して、思いのほか利益はあがりませんでした。梶塚社長は不思議に思い、改めて店内を観察してみると、あることに気づきました。ラスクの生産を担当する従業員たちがトレーを持って厨房内を行ったり来たりしています。実は、後から始めたラスクづくりは厨房内の空いたスペースで行っていたため、工程間の移動が多く、非効率になっていたようです。加えて、従来は各従業員が1種類の商品を1人でつくる、いわゆるセル生産方式を採用していました。しかし、ラスクの生産量が増えるにつれ、複数人が並行して同じ作業を行うようになっていたのです。

 早速対応しようと、各工程を分担するライン生産方式に変更しました。併せて、作業を効率化するため、新しい設備も導入しました。ところが、そうしてつくったラスクを売り出すと、お客さまから味が変わったと言われてしまいました。購入した機械も、同社にはしっくりこないものばかりでした。結局、数百万円する機械が無駄になったのですから一大事です。業績も改善しないまま資金は底を尽きかけ、梶塚社長は難局を乗り切る打開策を見出せずにいました。

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