中小企業の「見つめ直す経営」

A3用紙1枚の評価書で急成長~鐘川製作所(現・ベルテクネ)~ 日本政策金融公庫総合研究所 主任研究員 桑本 香梨氏

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 大正時代に創業した鐘川製作所(現・ベルテクネ)では、10年ほど前から「経営チェックシート」を導入しています。A3用紙1枚というアナログな手法ですが、導入前と比べて経常利益が2倍以上になるなど効果は絶大。どのような工夫があったのでしょうか。

従業員の声を経営に反映

 鐘川製作所(現・ベルテクネ)は、1914年の創業以来、金属部品の精密加工を手がけてきました。高い技術力のもと、医療や食品、ITなど幅広い分野の取引先を多く抱えています。

 4代目社長の鐘川喜久治さんは、就任当初から「全員経営」を目指してきました。そのきっかけは、バブル崩壊時の経験にあります。当時、経理を担当していた鐘川さんは、作業の効率化や取引先の見直しなどについて従業員と知恵を出し合いながら、負債の解消に努めました。従業員が積極的に問題に取り組んでくれたからこそ危機を脱却できたと考えた鐘川さんは、社長就任後もたびたび従業員に意見を求めました。しかし、先代がトップダウンで物事を進めるタイプだったこともあり、従業員の反応は消極的なものでした。

 従業員が経営陣に率直に意見できる環境をつくる必要があると考えた鐘川さんは、「経営チェックシート」をつくります。従業員に、会社と経営陣一人ひとりについて、「信頼できるか」「社員との意思疎通やコミュニケーションは取れているか」といった質問に回答してもらうものです。A3サイズの1枚の紙に、5段階の選択式の質問を12項目記載しました。項目ごとにコメント欄をつけ、要望や意見も書き入れられるようにしてあります。

 従業員からは、自身の評価に悪影響が出るのではないかという不安の声が上がりましたが、チェックシートを無記名式としたうえで、回収から集計まで経営陣は関与しないと約束し、理解を求めました。役員からも猛反対されましたが、うまくいかなければやめるからと説得しました。結果は、鐘川さんによる役員への評価と大差なく、誰も反対しなくなりました。

 鐘川さんと会社全体に関するチェックシートの結果は、コメント欄の内容も含めて社内に掲示しています。「もっと声をかけてほしい」「ゴルフに行きすぎだ」などと忌憚のない意見が多く寄せられるようになりました。

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