中小企業の「見つめ直す経営」

「小鍋で家庭の味」守る和惣菜メーカー~アオヤマ~ 日本政策金融公庫総合研究所 主任研究員 藤田 一郎氏

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 香川県高松市にあるアオヤマの工場内には、だしの香りが漂い、食欲がかき立てられます。ここでは100人を超える従業員が、24時間体制で和惣菜を手づくりしています。一見、非効率に思える製法を守る理由とは――。

小鍋で炊き上げ家庭の味を追求

 アオヤマは煮物やきんぴらごぼうなどの和惣菜をつくり、スーパーやコンビニエンスストアに出荷しています。レシピの数は100種類、1日当たりの製造量は約3万食に上ります。消費者の人気を集めている理由について、青山重俊社長は、家庭での調理を忠実に再現しているからだといいます。シイタケやニンジン、サトイモなどを炊いた人気メニュー、田舎煮を例につくり方を説明してくれました。

 使う材料はすべて従業員の手で一口大に切ります。味のベースとなるだしは香川県伊吹島産の煮干しから取ります。味つけはしょうゆ、酒、みりん、砂糖など一般家庭の台所にある調味料だけを使います。化学調味料や食品添加物は一切使いません。

 下ごしらえができたら、鍋に材料と調味料を入れ、100度の高温で約50分炊きます。ここが味の秘訣です。使うのは直径36センチメートルのアルミ製の鍋です。業務用でよく使われる直径1メートル以上の大釜に比べるとかなり小さいのですが、小鍋のほうが火の通りが良く、味が均一にしみ込むのです。1つの鍋で一度に炊ける量は20食分程度ですから、工場には36台のコンロを並べ、24時間体制で調理を行っています。

 同社はもともと漬物メーカーでした。惣菜づくりを始めたのは1994年のことです。きっかけは、取引先のスーパーの部長から、和惣菜をつくってみたら、と声をかけられたことでした。調理方法がわからない青山社長は、パートで働いていたベテランの女性従業員に、家のやり方と同じでよいから、和風の惣菜をつくってほしいと頼み、煮物をつくってもらいました。取引先の部長に試食してもらうと、「台所に立っていた母の姿を思い出す。ぜひ店頭に並べたい味だ」と喜ばれ、惣菜づくりがスタートしたのです。

 節約志向の高まりから外食を控える家庭や、働く女性が増えたことなどもあって、注文は右肩上がりで増えていき、そのたびに鍋とコンロを買い足す状況が続きました。経営者としてはうれしい限りですが、調理を担当する従業員の確保が課題になってきました。そこで、製造効率を高めるために、大きな鍋を使ってみることにしました。