中小企業の「見つめ直す経営」

独自性を追求しながら「見える化」する 日本政策金融公庫総合研究所 主任研究員 藤田 一郎氏

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 市場が縮小し、競争が激化するなかで、中小企業は従来のままでは立ち行かなくなってきています。ときには自社が抱える課題を特定し、軌道修正を図ったり、業務を改善したりする必要がありますが、その所在を見つけることは必ずしも容易ではありません。

 上場企業であれば、株式市場を通じて多くのステークホルダーから経営状況を常時チェックされています。一方、中小企業にとっては、そうした機会は多くはありません。多忙を極める日々の経営にあって、課題改善に向けた小さなシグナルまでを拾い切れている経営者は、少数派ではないでしょうか。

 本連載では、「データを使って経営活動に関する身近な事象を的確にとらえ、周囲と共有しながら事業の改善につなげる経営」を「見つめ直す経営」とし、それを実践する中小企業の事例を紹介していきます。連載第1回となる今回では、まず、見つめ直す経営が必要とされている背景を整理しておきましょう。

変わる経営環境

 中小企業の経営を取り巻く環境は、厳しさを増しています。総務省「経済センサス―活動調査」によると、全国の中小企業数(会社数と個人事業所数を合わせたもの)は、2012年に約385万社となりました(中小企業庁、2016)。前回調査時の2009年には約419万社(中小企業庁、2011)でしたから、わずか3年の間に34万社もの中小企業が姿を消したことになります。中小企業が今の時代に生き残ることの難しさを物語る数字です。

 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(日銀短観)で大企業、当研究所「全国中小企業動向調査」で中小企業と小企業の業況判断DIの推移をみると、規模の小さいほど水準が低くなっていることがわかります(図表1)。景気が回復するなかにあって大企業はプラス圏内で推移している一方、中小企業はゼロ付近を行き来していますし、小企業はまだマイナス圏を脱する気配はありません。

図表1 業況判断DIの推移

資料:日本政策金融公庫総合研究所「全国中小企業動向調査」、日本銀行「全国企業短期経済観測調査」

資料:日本政策金融公庫総合研究所「全国中小企業動向調査」、日本銀行「全国企業短期経済観測調査」

(注)1 小企業と大企業は「良い」企業割合-「悪い」企業割合(原数値)。

   2 中小企業は「好転」-「悪化」企業割合(季節調整値)。

 さらに将来にわたって経営環境の重しとなりそうなのが、人手不足の問題です。少子化と高齢化の進展によって、労働力の主要な担い手である生産年齢人口(15~64歳人口)は2015年に7,682万人と、1990年の8,590万人から25年で約900万人減少しました(図表2)。これを受け、労働需給は逼迫しています。求職者1人当たりの求人数を示す有効求人倍率は、2017年4月に1.48倍と、バブル期のピークを超えました。

図表2 日本の人口および生産年齢人口の推移

資料:厚生労働省「人口動態統計」、総務省「国勢調査」「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」

資料:厚生労働省「人口動態統計」、総務省「国勢調査」「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」

(注)人口の予測は出生中位・死亡中位を仮定している。

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