BCGが読む経営の論点2018

ブロックチェーン、下克上の武器 ボストン コンサルティング グループ

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 ボストン コンサルティング グループ(BCG)のエースコンサルタントが2018年に着目するテーマの戦略を紹介するシリーズ。第2回目は産業界の勢力図に破壊的なインパクトをもたらす可能性を秘めるブロックチェーンについてシニア・パートナーの佐々木靖氏が論考する。昨年、投機的な盛り上がりをみせた仮想通貨ビットコインのベースとなる技術は、金融以外にどう波及するのか。

契約の根拠「連続性」をネットでも担保

 幅広い産業に大きな影響を与えると言われるブロックチェーン。その破壊的な技術特性には、2つの側面がある。第1は、インターネットのような仮想世界に現実世界と同様の「連続性」を実現させることで、参加者間の信頼を「自律的」「分散的」に構築し、全体を管理する中央集権的機能を不要にする点だ。

 「連続性」は現実世界では当たり前に認識できる。誰かが右手に持ったボールを背中の後ろで左手に持ち替えたら、正面からそれを見ていた人は、左手にあるボールと右手から消えたボールは同じものだと合理的に確信できるだろう。

この「連続性」は、ヒトやモノの同一性を確認する基盤であり、資本主義システムの前提であるともいえる。「連続性」によって財産権の存在を認めることができ、財産取引、すなわち財産の移転を認めることができるのだ。

 また、「信用」という概念や契約そのものも「連続性」をよりどころとしている。契約の前提となっているのはアイデンティティ、財産、取引、そして信用である。署名、パスポート、印鑑、運転免許証などは、すべて現実世界の「連続性」を拡張するものである。

 ところが、インターネットのような仮想世界には、現実世界のような「連続性」が存在しない。仮想世界では、そこにあるデータがコピーではなくオリジナルであるという保証はなく、ネットの先にいるヒトもモノもアイデンティティを持たない(インターネットではあなたが犬であることを誰も知らない、という有名なジョークがある)。連続性がないということは、アイデンティティや所有権、取引、信用、契約が有効なものであるとお互いに確認するための土台がないということだ。

 仮想世界における取引の当事者間に、事前に現実世界での接点があれば、仮想世界でも暗号を使って直接的に関係を築ける。そうでない場合は、仲介者を立てることになる。

 筆者は現実世界で銀行との接点を持っている。読者も現実世界で銀行との接点を持っている。銀行同士も現実世界で接点を持っている。そして全体として、銀行という仲介者が、筆者と読者の仮想世界におけるアイデンティティを保証し、私たちの取引を仲介してくれる。このように、銀行などの現実世界の仲介者を介在させることによって仮想世界での連続性を実現するのが、これまでのやり方である。

 仮想世界における「連続性」欠如の問題を解決するのがブロックチェーンの技術である。この技術により、デジタルな連続性が担保できるため、お互いを信用する根拠を持たない多数の当事者を結びつけられるようになる。結果として、仮想世界のあらゆる仲介者に破壊的な影響を与えるポテンシャルを持つと言える。

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