石澤卓志の「新・都市論」

不動産のESG投資、企業収益にもプラス みずほ証券 上級研究員 石澤 卓志氏

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 環境を保護し、社会に貢献し、社会規範を重視した企業統治を行う企業に投資する「ESG投資」が脚光を浴びている。ただし、これらの概念には不明確な部分が多く、企業にとってのメリットも分かりにくい。実は、不動産分野では古くから環境に着目したルールづくりが進んでおり、事業でも広く活用されている。その効果を試算すると、企業収益へのプラス効果も大きいようだ。

有力投資家が次々とESG投資を開始

 ESG投資とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の3要素について優れた企業等に対する投資を指す。通常は、投資判断の基準として、ROA(総資産利益率)、ROE(自己資本利益率)、キャッシュフローといった財務指標が重視されるが、ESG投資とは「非財務」の情報に注目して投資するものである。

 少々乱暴な表現をすれば、これまで環境とは制度で規制されるもので、企業の利益にとってマイナスとのイメージが強かった。社会という項目は概念が不明確で、客観的な判断が困難だった。企業統治という項目も倫理的な側面が強く、企業の業績とは関連性が薄いとの見方が強かったと思われる。

 異論はあると思うが、そのようなイメージがあったESGが、最近数年間で「にわかに」注目されるようになったのは、有力な投資家がESG投資に続々と乗り出していることが大きいと考えられる。日本では2017年7月に、「世界最大級の年金基金」で「世界最大級の機関投資家」と呼ばれるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、ESGの指数に連動した日本株の運用を開始したことが、幅広い分野でESG投資が注目される契機となった。

 この動きの背景には、新たなビジネスモデルが次々と創出される一方で、名門企業などの不祥事が相次いで表面化し、従来の投資手法では評価しにくい事項が増えたことが影響している。企業経営の分野でも、コーポレートガバナンス(企業活動の統制・監視の仕組み)、スチュワードシップコード(責任ある金融機関・機関投資家の行動規範)、CSR(corporate social responsibility、企業の社会的責任)などのルールが浸透しつつあり、法令を順守し、社会に貢献することが企業価値に大きく影響するとの考え方が強まっている。

不動産はESG投資の重要分野

 ESG投資は最近数年間でにわかに盛んになったと前述したが、実際は10年以上の歴史がある。2006年4月に、国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP FI)と国連グローバル・コンパクトが共同で、PRI(Principles for Responsible Investment、責任投資原則)を策定し、持続可能(サステナビリティ、Sustainability)な社会を目指すために、企業が取り組むべき課題をESGの3分野に整理した。また、後述するように、環境に配慮した建物の基準などについては、日本でも20年ほどの歴史がある。

 不動産分野は、ESG投資についてかなり重要な役割を果たしている。2009年に、PRIのメンバーであるAPG(オランダ公務員年金)やPGGM(オランダ医療関係者年金)など、欧州の年金基金グループが中心となり、不動産会社等の環境に対する取り組みを評価する指標としてGRESB(グレスビー、Global Real Estate Sustainability Benchmark)を創設した。

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