石澤卓志の「新・都市論」

2018年の不動産市況、かく乱要因多く みずほ証券 上級研究員 石澤 卓志氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 2018年の不動産市場について、経済誌などでは悲観的な予想が目立つ。マンションは価格が高くなりすぎたため売れ残りが増加、オフィスビルは大量供給によって空室が急増、バブル期超えした地価は大暴落、といった見方が多いが、いずれも「取り越し苦労」と思われる。ただし悲観的な予想にも一定の根拠があり、かく乱要因が多い点が2018年の市況の特徴と言えそうだ。

増税前の駆け込み需要で、マンション市況は回復

 東京圏の新築マンション市場では、2017年1月~11月の供給戸数が前年比2.3%の小幅増加にとどまった(本稿執筆時点では12月分のデータは未公表)。また、売れ行きを示す初月契約率(発売月に売買契約が成立した戸数の、総販売戸数に対する比率)は67.1%となり、好調の目安とされる70%を下回った。

 しかし、住宅事業者の景況感は悪くない。不動産会社を対象に3カ月ごとに実施されているアンケート調査によれば、新築住宅を中心とする「住宅・宅地分譲業」については、「現在の経営状況」についての業況指数が、2017年10月時調査まで19期(57カ月間)連続でプラス水準(「良い」または「やや良い」との回答が過半の状態)となった(図表1)。

図表1:不動産業業況指数の推移

 販売不振にもかかわらず、事業者の景況感が良好な背景には、「売れる住宅」と「売れない住宅」がはっきりとしていることが影響していると思われる。やや乱暴な表現をすると、現在の市況では、「売れる住宅」かどうかは、交通利便性などの立地条件を見ればおおむね判断できる。「売れない住宅」が売れないことは「想定の範囲内」なので、市況データが不調を示しても、事業者はあまり問題視していないと考えられる。

 「売れる住宅」の供給は増えている。2017年1~11月の供給戸数をエリア別に見ると、東京23区は前年同期比14.4%の大幅増、東京都下も同4.4%の増加で、減少した地域は東京周辺の3県のみだった。神奈川県は、横浜や川崎のマンション人気が高いものの、大型開発が一段落したため、供給戸数は同▲12.5%に落ち込んだ。千葉県は、東京都心部から距離のあるエリアの販売が不振のため、供給を絞った事業者が多く、供給戸数は同▲13.5%の大幅減だった。埼玉県の供給戸数は同▲0.3%と、ほぼ横ばいだった。同県には販売不振のエリアもあるが、割安感が売れ行きを下支えしたようだ。

 2018年後半は、消費増税前の駆け込み購入によって、マンション市場が短期的に活況となる可能性が高い。駆け込み購入は「需要の先食い」にすぎないので、その後の反動に注意する必要があるが、2018年に限っては市況のプラス要因と言える。

 これらの状況を考慮すると、東京圏における2018年の新築マンション供給戸数は、前年比約10%増の40,000戸程度となり、契約率は70%台に回復すると予想される。

関連情報

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。