石澤卓志の「新・都市論」

インバウンド需要「モノからコト」は本当? みずほ証券 上級研究員 石澤 卓志氏

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ホテルは「実質的な満室状態」が継続

 外国人観光客の伸び率が鈍化する中で、不動産関係者には、東京や大阪のホテル市場が「調整期に入った」との見方が強まっている。ホテルの稼働率(シティホテル、リゾートホテル、ビジネスホテルの平均)を見ると、大阪府は2014年後半から85~90%程度、東京都は75~85%程度で推移し、いずれも横ばい状態と言える(観光庁「宿泊旅行統計調査」、図表3)。

図表3:ホテルの客室稼働率の推移

注:リゾートホテル、シティホテル、ビジネスホテルの平均。都道府県別。3ヵ月移動平均<br /></p><p>出所:観光庁「宿泊旅行統計調査」

注:リゾートホテル、シティホテル、ビジネスホテルの平均。都道府県別。3ヵ月移動平均

出所:観光庁「宿泊旅行統計調査」

 ホテルの稼働率は季節要因による変動が大きく、通常は夏期が高く、冬期が低い。夏期のピーク時だけで見ると、大阪府は90%程度、東京都は85%程度で「高止まり」していると言える。このデータは都道府県別の平均値であるため、大阪府や東京都とはいっても、繁華性がやや劣る立地のホテルも集計対象となっている。また、ホテルは短期間で宿泊客が入れ替わり、入れ替わりのタイミングによる空室やキャンセルが発生するため、稼働率が100%となることは物理的に考えにくい。

 東京都心部のホテルには、2020年の東京オリンピックを「本番」と捉えて、2016年から大規模改修に着手した例が目立つ。インバウンド需要が急増していた時期は工事ができなかったが、増加テンポの鈍化を受けてリニューアルに踏み切る例が増えた。リニューアル工事による空室期間の発生が、稼働率の低迷につながっている部分もある。

 これらの点を考慮すると、大阪、東京とも、ホテルは「実質的にほぼ満室」の状態が続いていると言える。一部の大手ホテルやホテルチェーン、REIT(不動産投資信託)が保有するホテルなどについては、個別施設の稼働率も開示されており、総じて高稼働率を維持している。これらの点を考慮すると、ホテル市場が「調整期に入った」という見方は、実態と異なると思われる。

客室数は2020年までに約1割増の見込み

 根強いインバウンド需要を受けて、ホテル計画が急増している。ホテル専門誌が半年ごとに実施している調査によれば、新・増設計画の客室数は2015年6月時の調査から4期(2年間)連続で過去10年間の最高値を更新し、最新の2017年6月時調査では609件・9万2,002室となった(オータパブリケイションズ調べ)。立地別では東京の133件・2万400室が最も多く、その他では大阪が61件・1万3,741室、京都が33件・4,801室などとなっている(図表4)。

図表4:ホテルの新・増設計画の推移

出所:オータパブリケイションズ「週刊ホテルレストラン」2017年6月2日号

出所:オータパブリケイションズ「週刊ホテルレストラン」2017年6月2日号

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