石澤卓志の「新・都市論」

インバウンド需要「モノからコト」は本当? みずほ証券 上級研究員 石澤 卓志氏

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中国人観光客は依然「モノ需要」が中心

 外国人観光客(全国籍)の1人当たり旅行支出額(パッケージツアー参加費に含まれる、日本国内での宿泊料金や交通費を含む)は、2015年第3四半期(7月~10月)には約18.7万円だったが、2016年第4四半期以降は14万円台に低下した。この内訳を見ると、「買物代」が、多少の変動はあるものの、ほぼ一貫して40%前後を占めている。「おカネをあまり使わなくなった」ものの、「モノ需要」が占める割合はあまり変わっていない。

 中国人観光客の1人当たり旅行支出額は、2015年第1四半期に30.0万円に達したが、最新データの2017年第2四半期では22.5万円に減少した。このうち「買物代」の割合は、2014年第4四半期~2015年第4四半期は60%前後で推移していたが、2016年第3四半期に44.8%に低下した。しかし2017年第2四半期には58.2%と、以前の水準に戻った。中国人の日本観光は、依然として「モノ需要」が中心と言える(図表2)。

図表2:外国人観光客の1人当たり旅行支出額の推移

注:訪日外国人1人当たり旅行支出額。国籍別・費目別。<br /></p><p>  パッケージツアー参加費に含まれる、日本国内での宿泊料金や交通費を含む。</p><p>出所:観光庁「訪日外国人消費動向調査」

注:訪日外国人1人当たり旅行支出額。国籍別・費目別。

  パッケージツアー参加費に含まれる、日本国内での宿泊料金や交通費を含む。

出所:観光庁「訪日外国人消費動向調査」

 最近では、欧州からの観光客の支出額が増えている。2017年第2四半期の1人当たり旅行支出額を見ると、英国人観光客は25.1万円(前年同期比+36.2%)、イタリア人観光客は23.3万円(同+25.2%)と大幅に増加し、中国人観光客(22.5万円)を上回った。

 支出額の内訳を見ると、英国人は宿泊料金(構成比45.8%)と飲食費(同22.1%)の2項目が7割近くを占めた。また、イタリア人は宿泊料金(同43.0%)、交通費(同21.0%)、飲食費(同20.3%)の3項目で8割を占めた。「モノ需要」が一服したとの一般的なイメージは、中国人観光客の消費額が減少する一方で、「コト需要」を重視する欧州などからの観光客の存在感が強まったことも影響していると思われる。

 観光庁は2017年7月に体制を強化・拡充した。人員数は4月から約100人増加して約250人となったが、増員の半数は民間からの登用である。組織面では、従前の「外客誘致室」が「アジア市場推進室」に変更されたほか、「欧米豪市場推進室」「新市場開発室」「総合計画室」が設置された。

 このうち「欧米豪市場推進室」は、欧米からの観光客誘致を強化する専門部署である。報道によれば、日本食や伝統文化などの定番メニューに加えて、英国人旅行者に対しては自然・景勝地巡りや温泉など、フランス人向けにはアニメやファッションなど、イタリア人やスペイン人に対しては芸術などと、国ごとに異なるニーズへ対応し、新婚旅行などの需要喚起にも取り組む方針という。

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