石澤卓志の「新・都市論」

基準地価で見えてきた「実需の限界」 みずほ証券 上級研究員 石澤 卓志氏

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 国土交通省が9月20日に公表した基準地価(正式名称は「都道府県地価調査」、2016年7月1日時点)によれば、全国・全用途の地価は前年比▲0.6%と25年連続で下落したが、下落率は7年連続で縮小した。特に商業地の回復が目立ち、全国ベースは同0.0%と、9年ぶりに下落から脱却した。その一方で、住宅地は3大都市圏の全てで上昇地点数が減少するなど、地価水準が「実需の限界」に近づいたことを示す現象も見られた。

名古屋駅前が2年連続で、地価上昇率トップと第2位を独占

 今回の基準地価において、大幅な上昇が見られた地点は、(1)再開発が進行した地域、(2)交通アクセスが整備された地域、(3)観光・リゾート需要が盛んな地域、に大別できる。この区分は2014年以降、ほとんど変化していない。ただし、地価上昇の範囲が拡大するに伴って、各区分に含まれる地域が多様になった。

 上記(1)の「再開発が進行した地域」は、大都市圏については「不動産投資が盛んな地域」と、ほぼ一致する。特に、駅前など繁華性に優れた場所は、不動産投資の収益率も高い場合が多いため、「投資が再投資を生む」状況となっている。

 今回の基準地価で、全国・全用途の上昇率トップは、名古屋駅・太閤通口に位置する「井門名古屋ビル」の調査地点、同第2位は名古屋駅・桜通口の「名駅古川ビル」の調査地点だった。前年の基準地価では「名駅古川ビル」が上昇率トップ、「井門名古屋ビル」が同第2位だったので、2年連続で名駅エリアが上昇率上位2地点を独占したことになる。この他、太閤通近くの「ビジネスホテルカーム」も、前年調査で同第6位、今回調査で同第5位となった。

 名古屋では、2015年のオフィスビル供給量が過去最大規模となったが、平均空室率は7%前後で安定している(三鬼商事調べ)。今年6月に竣工した「シンフォニー豊田ビル」も満室でスタートした。少なくとも5棟の大型ホテル計画が進行しており、リニア中央新幹線の整備に対する期待も高まっている。これらの要因が名古屋の地価を押し上げた。

 ただし、名古屋の地価は地元経済に大きく左右される傾向がある。いわゆる「トヨタショック」(2008年11月)後の2009年基準地価では、全国・全用途の下落率10位までの3地点を名古屋が占め、それに続く2010年公示地価(2010年1月1日時点)でも前年比20%超の下落となった地点が多く見られた。名古屋経済は今後も好調が続くと予想されるが、地価の「山」と「谷」の差が大きい点に注意すべきと思われる(図表1)。

図表1:名古屋・主要地点の地価変動率

注:1.青線は名駅エリア、赤線は栄エリアであることを示す。<br /></p><p>  2.全国・全用途の地価上昇率第2位となった「名駅古川ビル」は、2014年に調査地点に加わったばかりのため、本グラフでは省略した。</p><p>出所:国土交通省「都道府県地価調査」

注:1.青線は名駅エリア、赤線は栄エリアであることを示す。

  2.全国・全用途の地価上昇率第2位となった「名駅古川ビル」は、2014年に調査地点に加わったばかりのため、本グラフでは省略した。

出所:国土交通省「都道府県地価調査」

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