石澤卓志の「新・都市論」

東京の地価上昇はバブルの危険水域へ みずほ証券 上級研究員 石澤 卓志氏

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東京都心部の地価は「バブル」に近づいた

 一般的に、「地価上昇は不動産会社にとってメリットが大きい」というイメージがある。確かに保有不動産の資産価値が拡大する手ではメリットがあるが、その一方で固定資産税などの負担が増加するデメリットもある。また、新たに不動産を購入する場合には、取得コストが増加し、不動産投資の利回りが低下するなどの問題が生じる。

 日本不動産研究所が6ヵ月ごとにまとめている「不動産投資家調査」によれば、東京の「丸の内・大手町」エリアに立地するAクラスビル(優良ビル)に対する「期待利回り」(不動産投資の判断基準となる利回り)は、2012年10月時調査まで8期(4年間)連続で4.5%の横這い状態だったが、2013年4月時調査で4.3%と低下に転じ、最新調査(2015年4月時)では3.8%(前回調査に比して▲0.2%ポイント)となった。

 また、同エリアのAクラスビルに対する「取引利回り」(市場で取引されている価格に基づく利回り)も、2012年10月時調査まで8期連続で4.2%の横這い状態だったが、最新調査では3期連続で低下して3.5%(6ヵ月前比▲0.2%ポイント)となった(図表4)。

図表4 東京都心部における期待利回り等の推移

注:1.東京・丸の内エリアのAクラスビルに投資した場合の投資利回り等をまとめたもの。2.「リスクプレミアム」は、対10年国債。3.調査方法が数次にわたって変更されているため、データが連続していない部分がある。出所:日本不動産研究所「不動産投資家調査」

注:1.東京・丸の内エリアのAクラスビルに投資した場合の投資利回り等をまとめたもの。

2.「リスクプレミアム」は、対10年国債。

3.調査方法が数次にわたって変更されているため、データが連続していない部分がある。

出所:日本不動産研究所「不動産投資家調査」

 筆者は、不動産賃貸事業が成立するには、3.5%以上の利回りが必要と考えている。この利回りを下回る取引は、転売を目的としたものが中心となり、「バブル」的な要素が強くなる。不動産は個別性が強いため、一概には言えないが、東京都心部の「取引利回り」が3.5%まで低下したことから、不動産市場が「バブル」に陥る可能性が高まったと言える。

 昨年10月末に日銀が決定した追加緩和の影響などにより、不動産投資はさらに活発化すると予想される。このため、今年9月20日頃に公表される基準地価(都道府県地価調査)では、東京都心部で前年比+20%超の大幅上昇を示す地点が出てくる可能性がある。特に、不動産の単価は高いものの、中小規模の物件が多いため投資総額が抑えられ、投資対象候補が豊富な港区や渋谷区では、「局地的なバブル」が発生しやすいと言える。

 日本国内の法人としては最大の不動産の「買い手」であるJ-REIT(不動産投資信託)には、不動産価格の高騰を警戒する動きが強まっている。J-REITが2015年1月~5月に取得した不動産は224件・837,597百万円となり、前年同期(192件・674,195百万円)を大きく上回った(引渡日ベース、6月30日に上場したサムティ・レジデンシャルが上場前に取得した物件を含む)。

 このうちオフィスビルの取得は77件・396,763百万円(前年同期比+33.1%)と、取得額は大幅に増加したものの、1物件当たりの取得額は5,088百万円と、前年(2014年暦年、8,189百万円)を大きく下回った。優良物件の不足によって、取得物件の小型化が進行したと言える。

 資産規模が大きいJ-REITには、無理に不動産取得を進める必要がないため、高値取引を避けて、不動産取得のペースを抑制している例が見られる。このため、2015年(暦年)にJ-REITが購入する不動産は1.4兆円程度にとどまり、前年(396件・1,576,310百万円)を下回る可能性が高いと思われる。「不動産投資の活発化」が「不動産投資の障害」となりつつある。

石澤 卓志(いしざわ たかし)

1958年慶應義塾大学法学部卒、日本長期信用銀行入行。調査部などを経て長銀総合研究所主任研究員。1998年第一勧銀総合研究所で上席主任研究員。2001年みずほ証券に転じ、金融市場調査部チーフ不動産アナリスト。2014年7月から企画グループ経営調査部上級研究員。主な著書に「東京圏2000年のオフィスビル 需要・供給・展望」(東洋経済新報社 1987年)、「ウォーターフロントの再生 欧州・米国そして日本」(東洋経済新報社 1987年)、「東京問題の経済学(共著)」(東京大学出版会 1995年、日本不動産学会著作賞受賞)などがある。国土交通省「社会資本整備審議会」委員など省庁、団体などの委員歴多数。

キーワード:経営、企画、経営層、管理職、プレーヤー、経理

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