石澤卓志の「新・都市論」

エリアの競い合いが促す「地方再生」 みずほ証券 上級研究員 石澤 卓志氏

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 地価は、その地域の「活力」を示すバロメーターと言える。2015年の公示地価では、全国・商業地の年間変動率が7年ぶりに下落から脱却するなど、日本経済が活力を取り戻しつつあることが示された。各地の動向をみると、地域内のエリアが競い合い、都市の発展を支える基盤が構築されつつある例も出てきた。

地価水準が高い場所ほど、上昇率も高く

 2015年1月1日現在の公示地価には、いくつか興味深い動きが見られる。今回の公示地価で高い上昇率を示した地点は、(1)再開発が進行した地域、(2)交通アクセスが整備された地域、(3)観光・リゾート需要が回復した地域、(4)東日本大震災の被災地、の4つのグループに分類できる。

 このうち(1)は「不動産投資が盛んな地域」と言い換えることもでき、今回の公示地価では、大都市の中心部が特に高い上昇率を示した。たとえば、東京・中央区の「山野楽器銀座本店」は、地価水準が全国トップの地点であるが、前年比+14.2%の大幅上昇を記録し、全国・商業地の上昇率第3位となった。このほか、銀座7丁目の「ZARA」(全国・商業地の地価水準第4位、上昇率は全国・商業地の第4位)、「明治屋銀座ビル」(地価水準は全国・商業地の第4位、上昇率は同第6位)、「銀座ソニービル」(同第3位、同第8位)など、地価水準の上位地点が軒並み、地価上昇率についても上位を占めた。

図表1 平均地価と変動率(東京23区・商業地)

注1:2015年の公示地価における東京23区商業地について、各区の平均価格と平均変動率をまとめたもの 注2:グラフ中の曲線は大まかな傾向を示す 出所:国土交通省「地価公示」

注1:2015年の公示地価における東京23区商業地について、各区の平均価格と平均変動率をまとめたもの

注2:グラフ中の曲線は大まかな傾向を示す

出所:国土交通省「地価公示」

 東京23区の商業地について、各区の平均価格と平均変動率との関係を見ると、「地価水準が高い地点が、地価上昇率も高い」傾向が認められた(図表1)。同様の傾向は、大阪や名古屋など、地方都市にも見られた。

「地価水準が高い」場所の多くは、その都市のビジネス・行政の中心部であるが、複数のビジネス核が存在する都市が増えている。上記の地価上昇要因の(1)と(2)は密接な関係があり、再開発が盛んな「新興」のビジネス街は、交通利便性の高い駅周辺に位置する例が多い。

 一方、地方都市には、伝統的な中心部が、駅から離れた場所に所在している例が少なくない。これまでは「旧来」の中心地から、「新興」エリアへビジネス機能が移動する傾向が強く、公示地価でも「新興」エリアの地価上昇が目立った。これに対して、今回の公示地価では、「旧来」の中心部でも地価が大幅に上昇した地点が増え、同じ都市の「地価水準が高い」エリアの間で、地域間競争が激化しつつあることが示された。

 たとえば大阪では、いわゆる「キタ」に位置する「グランフロント大阪南館(タワーA)」の調査地点が前年比+10.4%の上昇を示し、大阪圏・商業地の上昇率第3位となった。一方、「ミナミ」でも、「ラズ心斎橋」(前年比+11.3%、上昇率は大阪圏・商業地の第1位)、「ヤマハ心斎橋店」(同+10.7%、同第2位)、「づぼらや」(同+9.8%、同第4位)などが顕著な上昇となり、「キタ」よりも大幅に上昇した地点も多かった。

 大阪市内の大型再開発は「キタ」に集中しており、現在の地価水準は梅田エリアの方が高いが、「ミナミ」でも道頓堀川周辺などの整備が進み、賑わいが増したことが地価を押し上げた。また、「くいだおれ太郎」の人形で有名な「中座くいだおれビル」を、香港の投資ファンドが買収するなど、「ミナミ」でも不動産投資が盛んになっている。「キタ」はオフィスビルや大型百貨店が中心、「ミナミ」は中小規模の店舗や飲食店が中心だが、地域間競争が激化したと言える。

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